2024年7月23日(火)

Wedge REPORT

2016年12月19日

 それならば、育児世代の共働き家庭を訪ねて一日体験をして、様々な相談をすればよいのではないか。これを「家族留学」と名付けて展開する学生団体が「manma」である。代表を務める新居日南恵氏はいまだ学部生だが、政府審議会の委員も務めるなど、学生であることを存分に生かして活動している。

 地方の衰退が問題視されるなか、ありきたりな地方活性化ではなく、地方にある優れた産品を都会の若者が買いたくなるようにリデザインする「ハピキラFACTORY」も、代表の正能茉優氏、山本峰華氏が学部生のときに立ち上げた。

 ふとした偶然から訪れて大好きになった地方の町と一緒に仕事をする。そのことで地方も、自分たちも楽しい人生を送ることができる。二人とも大企業に勤務する一方で社長業を続け、兼業による多様なライフスタイルの提言をしているほか、後輩たちを「日本かわいいプロデューサー」として育てるなど、将来に向けた活動も進めている。

日本の若者は「大文字の政治」とは距離を置く

 台湾で、スペインで、韓国で学生たちと話したときに、統治構造をはじめとする「大文字の政治」に対して深い関心と理解を持っていることに驚く一方で、彼らが少子高齢化や地方活性化といった具体的な政策に対する興味と知識が乏しいことに気づいた。

 他方、日本の若者は「大文字の政治」とは距離を置く。それを人は「日本の若者は政治に関心がない」と言うのだろう。しかし、それは公共に対する無関心を意味するものではない。上記の取り組みを見れば明らかであろう。

 もっとも、政治に向き合おうという動きもある。高校3年生が立ち上げて4年間活動を続けている「僕らの一歩が日本を変える。」はその代表例であろう。彼らは香港や台湾の学生とも交流し、活動の幅を広げている。ボートマッチシステムを導入している政治情報サイト「日本政治.com」も大学生が立ち上げたものだ。彼らにとっては、少子高齢化も、地方活性化も、政治参加も、自分たちの世代が直面する課題である。

 彼ら彼女らと話していると、この層が「ゆとり教育」の勝ち組であることに気づかされる。ゆとりとして得た時間に、彼らはさまざまな経験をし、刺激を受け、意欲的な大人たちと交流した。そして2005年の郵政選挙、2009年の政権交代、2012年の再交代を見てきた彼らは「政治だって変えられるもの」という感覚を持っている。そして2011年の東日本大震災が彼らをして、公共のために何かをするという気持ちを抱かせた。

 震災後、大学のキャンパスには「何かを実現したい」と考える学生が溢れるようになった。講義に出ず、サークルに没頭し、モラトリアムとしての大学生活を送った世代が思い描く大学生の像はもはや過去のものとなりつつある。彼らは自分の課題にぶつかっては、それを乗り越えるために教室にやってくる。サボったり、ノートを回したりする姿はそこにはない。

 すでに、政府や一部の企業は、この意欲的な学生たちと協働をはじめている。「若者は政治に関心がない」のではなく、見ている次元が異なるのだ。その違いを超えて、むしろ彼らをパートナーとして社会を変える時代が来たと捉えたらどうだろうか。世界的に見て「意識高い系」になりやすいと分析された日本の中高年にとって、これは朗報なのかもしれない。

  
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