2024年11月23日(土)

Wedge REPORT

2010年8月2日

 救助に何日も要していた昔は「遭難すると家がつぶれる」などと言われていたが、今日の救助費用は、捜索が長引かないかぎりだいたい100万円以内で収まっており、個人での支払いが決して無理な金額ではない。それに今はさまざまな種類の山岳保険がラインナップされている。

 「貧乏人は救助しないのか」という非難の声が上がるかもしれないが、最低限の捜索救助費用を補償する山岳保険の年間保険料はたかだか5000円前後。登山靴や雨具に数万円のお金をかけられるのだから、山岳保険を登山に必要な装備のひとつと考えれば、安いものである。山岳保険での補償を楯にした安易な救助要請については、各保険会社が救助要請の妥当性をチェックするシステムを構築することによって防ぐことができるはずだ。

 救助費用を自己負担とし、山岳保険への加入が登山者の義務となれば、なにより「登山は自己責任で」という意識が高まるようになり、安易な救助要請も確実に減るだろう。もちろん反対意見もあるだろうし、解決すべき問題も少なくないと思う。しかし、今、急務とされているのは“連れられ登山”に慣らされてしまっている登山者に自立を促すことであり、救助費用の受益者負担はいわばそのためのショック療法みたいなものだ。

 増え続ける遭難事故に歯止めをかける一手段として、関係者はそろそろこの問題に真剣に向き合ってみてはいかがだろうか。

◆ 「WEDGE」2010年8月号



 

 

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