2024年4月26日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2017年10月27日

――先ほどからお話に出ている洗練された中国人は、マナー違反をする中国人に対してどう思っているのでしょうか?

中島:洗練された人たちは、団体旅行の観光客と私たちを一緒にしないで、という気持ちが強いですね。

 昨年、北海道の新千歳空港で中国人が暴れて話題になりました。上海在住の中国人の友人も日本で同じような場面に遭遇したことがあり、飛行機が飛ばなかったそうです。空港内の中国人が「日本人は中国人が嫌いだから、飛行機が飛ばない」と勘違いし、暴れそうになったので、日本のことをよくわかっているその友人は彼らに事情を説明してまわり、説得したようです。

 情報不足や言語の問題で、お互いに誤解してしまうことはよくありますが、私の友人のように、両国のことをよく理解している人は、誤解を解く努力をしてくれています。

 一口に「中国人」と言っても、その幅は日本人よりはるかに広く、洗練された人と、田舎の村から出たことのない人では非常に差が激しい。でも、均一化した社会に住む日本人から見ると「中国人」をみんな一括りに考えてしまいがちです。

――中国人が変化しているのには気が付きにくいと思うのですが、観光客を見かけた時に、どんなところに注目すると変化を感じ取れますか?

中島:15年は500万人、昨年は637万人、今年は700万人を超えると予想されるほど、多くの中国人観光客が日本を訪れています。爆買いが騒がれた15年は、マナーの悪い中国人が目につき、マスメディアで報道され、日本人にそういうイメージが焼き付いたと思います。でも、15年から200万人も観光客が増えているにもかかわらず、最近ではマナーの問題が以前ほど話題にならなくなりました。それは私たち日本人と同じような旅行、つまり、静かな時間を旅館で過ごし、周囲の迷惑にならないよう振舞っている人が増えているからこそ、気にならなくなってきたんだと思いますね。

――それでも中国人に対し、アレルギーを持っている人は多い印象があります。彼らと向き合うためにはどうすれば良いでしょうか?

中島:多くの日本人は、人民服を着て自転車に乗っている30年以上も前の中国のイメージを引きずっていると感じます。若い人にしても、中国が貧しかった時代を知らないはずなのに、そのイメージが引き継がれている。人間の固定概念やイメージというのは、そう簡単には変わらないのだな、と感じます。確かに、中国も何もかもが変わったわけではなく、濃密な親子関係などは昔と変わらないところもあります。 

 大学で中国について話をすると、学生たちの感想のなかには「中島さんが言っていることは、中国へ行けとか、仲良くしろ、と強制しているのではなく、アルバイト先の中国人や、学内の中国人留学生とまずは対話してみよう、ということですね」というものがありました。そういう身近なことでいいと思うんです。日本には、約70万人の中国人が住んでいて、留学生も多くいます。少しでも彼らの行動背景を知ることは、合わせ鏡のような存在である日本や自分自身を知ることでもあると思うのです。中国に限らず、物事の背景に関心を持ち、多面的なものの見方をすることが重要だと思います。

 中国はいま経済的に上昇し、社会が大きく変化している最中ですが、成熟し洗練された人であればあるほど日本のことを尊敬してくれている。だから、日本人ももっと自信をもって奮起してほしい、そんな気持ちも込めて、この本を書きました。

  
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