チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年10月31日

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西本紫乃 (にしもと・しの)

北海道大学大学院公共政策学連携研究部付属公共政策学研究センター研究員

1972年広島県生まれ、広島大学大学院博士後期課程単位満了退学、元外務省専門調査員(在中国日本国大使館)。著書『モノ言う中国人』(集英社新書、2011年)。

中央と地方の重要ポストの人事

 中央政治局常務委員の人事では当初、これまでの年齢による退任の前例をやぶり留任が取り沙汰されていた王岐山氏が退任した。次の世代のリーダーを担う第六世代も、習近平主席の後継と目されている陳敏爾氏、共青団系の胡春華氏も中央政治局常務委員には選ばれず、バランスを重視した人選となった。

 しかし、25名のうち半数近くが今回入れ替わった政治局員には、「之江新軍」と称される習近平主席の地方勤務時代の部下や、清華大学の同窓生といった個人的に近しい人材が多数登用されている。栗戦書氏に代わり党指導者の秘書室的機能を担う中央弁公庁主任に、習近平主席が上海市の党のトップを務めた際に秘書長を務めた丁薛祥氏が登用された。また、経済政策の中心を担う中央財経領導小組弁公室の主任で、経済政策のブレインとして習近平主席が「私にとってとても重要」と評する劉鶴氏も政治局入りした。党の人事権を握る中央組織部常務副部長だった陳希も中央組織部のトップに昇格し、政治局入りした。陳希氏は習近平主席の清華大学時代の同窓生で宿舎のルームメイトだった。省の党委員会書記のポストにも上海に李強氏、江蘇省に娄勤倹氏など、習近平主席に近い人材が登用された。

白けた気持ちで遠巻きに政治を眺める国民たち

 このように習近平主席によって引き立てられた幹部らの忠誠心は、国のため人民のためというよりは習近平主席個人に対して向けられるだろう。彼らは「新時代の中国の特色ある社会主義思想」の忠実な旗振り役となることが予想される。つまり、時代に逆行するかのような政治イデオロギーを強く押し出す政治が展開されていくことになるだろう。

 今日の中国では、政治的締め付けの強化に苦々しい思いを抱えながらも保身のため妥協して迎合している人が多い。また、党組織や行政の上から下まで中央の政治方針に忠実であることが出世の上で大事だと考える人も少なくない。他方で、大多数の国民は白けた気持ちで政治を遠巻きに眺めながら長いものに巻かれつつ日々暮らしている。中国の人々は与えられた自由の範囲でとかく「自己利益の最大化」を図る行動をとる傾向が強い。こうした重苦しい政治の空気の中で、各々が保身のため、出世のため、暮らしていくため自分の目的に合わせて政治を利用している。習近平主席がまわす大きな政治の歯車は、国民の声や国際社会の評価によって軌道修正されることなく、この先も加速しながら回っていくのだろう。
 

  
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