トランプ大統領の孟氏利用法
では、トランプ大統領は具体的にどのようにして刑事事件と通商協議をリンクさせるのでしょうか。トランプ氏が描いている可能性がある筋書を1つ紹介してみましょう。
トランプ大統領はカナダ政府に対し孟副会長の身柄引き渡しを強く求めます。最終的には、カナダの裁判所が身柄引き渡しを審査し、決定するわけですが、仮に実現すれば舞台はニューヨーク連邦地裁に移ります。米国で、孟副会長は有罪になり、禁固刑が言い渡されます。
もしそうなれば、この時点で米中関係はかなり悪化しているでしょう。そこでトランプ大統領は、習主席のメンツを保ち、貸しを作るために、孟副会長に恩赦を与えます。そうすることで、通商協議で中国から最大限の譲歩を引き出せます。これがトランプ流のディールパターンです。
以下で、トランプ流パターンについて詳細に説明しましょう。
トランプ流ディールパターン
トランプ大統領には、ディールパターンが存在します。まず、自ら交渉相手に仕掛けていきます。米中貿易戦争では、トランプ氏から中国製品に対して追加関税をかけました。
次に、対決姿勢をとり、事態をエスカレートさせ、意図的に危機的状況を作ります。問題解決の糸口が見えないため、交渉相手を含めたステークホルダー(利害関係者)は不安に駆られます。
ところが、緊張が高まりピークに達すると、トランプ大統領は対決姿勢を弱めて、一旦引きます。例の中国に対する90日の猶予が、これに当たります。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで12月1日、米中首脳会談を開催した際、中国製品に対する新たな追加関税の延期及び90日の通商協議の開始に合意しました。
トランプ氏との全面対決の回避を探っている交渉相手は、ほっと安堵の胸をなでおろします。このタイミングを狙って、トランプ氏は相手から多くの譲歩を引き出すわけです。
最後にトランプ大統領は「勝利宣言」を行います。バラク・オバマ前大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領、ビル・クリントン元大統領など歴代の米大統領が成し得なかった偉業を自分は達成したと豪語するのです。