Wedge REPORT

2019年2月20日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年生まれ。85年に早稲田大学卒業後、フリーランスとして活動。「堤清二 『最後の肉声』」(文藝春秋)で、第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)を受賞。近著に『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』(文藝春秋)。

 旅客列車は2日で1往復し、乗客は1日平均500人。一方、貨物列車は1日4~5編成(200コンテナ)が運行され、今年9月には8~10編成の運行を目指している。

 中国人の手によるジブチ・エチオピア鉄道の電化について聞いてみた。

 「本当にありがたい。この鉄道のお陰でエチオピアともっと近くなった。これは凄いことだ。人も物もたくさん行き来できるようになった」

 マネージャーの答えは明瞭だった。ジブチ経済の生命線を握っているのは、ジブチの背後に控える大国エチオピアなのである。また、物流の拠点である港を持たないエチオピアにとり、輸出入貨物の9割が経由するジブチの港はある意味、エチオピア経済の生命線でもあるのだ。

ジブチ・エチオピア鉄道は貨物列車も電化されているが、ナガド駅からコンテナターミナルまではディーゼル機関車で牽引される

 ジブチにとってのエチオピア、エチオピアにとってのジブチ。だからこそ、共存関係にある両者を結びつける鉄道は重要なのである。そこに目をつけ巨大な投資を厭わぬ中国。その抜け目なさに太刀打ちできる国は見当たらない。その規模感も同様だ。

 しかし、その投資規模は当然驚くべきものなのだが、それとともに驚かされたことがある。それは、中国人はハコものしか作らない、と判断するのは早計だ。エチオピアに出発する列車の横に立つ駅員が指差しで安全確認をしていた。さらに、駅員同士が互いに安全を確認した上で列車を出発させるのだ。こうした駅員による安全確認は日本人が中国人に教えたものだ。つまり、日本人から移植されたソフトが、このジブチで中国人からジブチ人に伝授されているのである。中国の投資の在り方も、カネだけという批判を受け変容しつつある。これも恐るべきことではないだろうか。日本人が得意とするソフトにも手を伸ばし始めているのだから。

【後編:中国軍初の海外基地は鉄道・港湾建設の見返りか?

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■「一帯一路」の衝撃 ルポ 中国に飲み込まれるジブチ・エジプト・ギリシャ
PART 1 中国マネーの甘い蜜に麻痺するシーレーンの要衝アフリカ・ジブチ
 1⃣鉄道、港湾、軍事基地 経済と軍事の表裏一体でジブチを飲み込む中国
 2⃣シーレーンの安全をアフリカの空と海から守る 自衛隊「海賊対処」の舞台裏
 3⃣ジブチの礎を支える日本 中国式との差別化のカギは「持続的発展」と「現地化」
 佐藤正久・外務副大臣インタビュー  自衛隊がジブチで活動する意義
Part 2    「新首都」の建設と経済貿易協力区 水上の要衝・スエズ運河を取り囲む中国
Part 3     欧州の玄関港を"支配"する中国  「トロイの木馬」と化すギリシャ
Part 4     経済回廊でパキスタンを取り込んだ中国が抱える"ジレンマ"
Part 5   肥大化する一帯一路投資 「軌道修正」を図る中国 
Part 6   「一帯一路」を「インド太平洋」で無害化

  
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◆Wedge2019年3月号より

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 

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