今世紀末には、人口が40億人に達すると見込まれているアフリカで、電気も水もITも使えない中、農民の所得向上を目指して奮闘する若者がいる。
今世紀末には人口が40億人に達し、世界経済にとって重要な地域になると予想されるアフリカ。そこで「農民の所得向上」を目指して事業を営むのが牧浦土雅だ。牧浦は杉並区立和田中学校に在学中、英国の寄宿学校に転じた。大学に入る前、途上国の教育支援を行うNPO「e-Education Project」のルワンダ代表として、同国に渡り活動。その際、輸送手段がなく放置されている農作物(キャッサバ)を発見。難民キャンプの食料を求めていた国連への輸送と販売を行い、農民たちに新たな収入をもたらした。
しかし昨年、久々にルワンダを訪れたところ、「都市部は発展したものの、農村部は何も変わっていなかった」。その教訓を踏まえ、2018年11月にガーナで新たな二つの事業を立ち上げた。一つは農作物を農民から買い付けて輸送し、食品加工会社へ販売をする流通事業。もう一つは衛星画像によって、どこの農地で、農作物の買い付けが可能かを調査する事業だ。
農民たちは、畑に買いに来た仲買人に農作物を売ることが多い。それを牧浦たちが大規模に買い付け、輸送することで、農民やトラックドライバーに安定的に収入をもたらす。「泥臭い仕事ですよ」と笑う。
実は、ここに牧浦なりのアフリカへのかかわり方のこだわりがある。
「日本人は途上国と聞くと、すぐに『寄付』が必要だと発想します。確かに、エボラ出血熱のアウトブレイクへの対処といった緊急性の高いこと、中長期的にしか効果のはかれない学校の建設などにはそれらが向いています。しかし、国の財政から拠出される寄付には、寄付なりのしがらみがあります。例えば米国の対外援助機関の国際開発局(USAID)が3年のプロジェクトで調査、研究していても政権交代となり打ち切り、といったことはままあります」
だからこそ、寄付ではなし得ない所でビジネスモデルを作ることは、その後の現地の人の収入向上にも寄与する。
牧浦は今後、「国づくりをしたい」と語る。「アフリカでは児童労働や教育格差が問題です。しかし、多くの農民には電気も水も供給されず、自分たちの月収がいくらかもわからない。ITに頼れない環境で、先進国の『当たり前』をどう提供するかにやりがいを感じます」。アフリカの人口増加が、世界にプラスに働くかマイナスとなるかの鍵は、こうした若者が握っている。
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