Wedge REPORT

2019年12月5日

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”託児所”化する学校
進まない教員の意識改革

 なぜここまで学校で長時間労働が横行してきたのか。教員の長時間労働の温床となっているのが、「教職員給与特別措置法(以下、給特法)」の存在だ。給特法により、教員は給料に月額の4%分を上乗せして支給される代わりに、休日出勤や残業に対する賃金は支給されない。賃金と勤務時間がひも付かないので、「時間管理」に対する学校の認識は薄れていった。

 教育研究家の妹尾昌俊氏は、長時間労働を生んでいる別の原因について指摘する。「教員の働き方を考えずに教員の業務量を増やしたことに原因がある。授業だけでなく、生徒指導、課外活動、事務作業など、授業以外の負担が大きい。学校に求められることも増えており、安全配慮や食物アレルギーへの対応など、子供に関することは何でも教員が対応しなければならなくなっている」。

 授業時間やその準備時間(教材研究など)は教員にとっての本業である。文科省が作成する学習指導要領は教育内容や授業数の全国的な基準となるが、前回改定(08年)では、「ゆとり教育」からの揺り戻しもあり、年間授業数が中学校で105時間、小学校で278時間増加した。

 加えて、直近の改訂(2017年)では小学校での英語教育やプログラミング教育など新たな内容が追加されるとともに、生徒が能動的に学ぶことができるような新たな授業形式が取り入れられた。その一方で、新たな学習指導要領は、前回から学習内容の削減は行わないという方針のもと改訂された。

 「文科省の政策はビルドアンドビルド。ゆとり教育の批判が根底に残っているので減らしにくい」(妹尾氏)とみられている。

 また、生徒指導や部活動など、授業以外の負担も大きい。自らも教員として働き、学校の労働問題を扱うサイトを運営し、SNSを通じて発信する「ホワイト学年主任!」は、教員を取り巻く社会環境の変化について「共働き世帯や核家族世帯が増え、家庭で教育する余裕がなくなっている。また、近所の付き合いや地区の子供会も減って、地域全体で育てる文化も少なくなっている。結果として、家庭、地域、学校の三者が担っていた教育の多くを学校が負担することで、託児所のようになってしまっている」と打ち明ける。

(出所)中央教育審議会の資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 こうした部活動や家庭訪問などの「業務」は時間外に発生したとしても教員の自発的行為とみなされる。これらは給特法で認める時間外勤務(①生徒の実習、②学校行事、③職員会議、④災害時の緊急措置)の範囲外であり、予算や教員定数の措置対象とならないのだ。中央教育審議会(以下、中教審)は19年1月に教員および学校が担うべき業務について明確化し(右図)、部活動や夜の見回りなどは必ずしも教員が担う必要はないと明示した。しかし、それらの「業務」を教員が簡単に手放すことなどできないようだ。

 大阪府のある女性教員は、自分の生徒が家出をしたとき、保護者と一緒に夜中まで探し回った。「家庭環境の悩みについて本人から相談を受けていたので、ほうっておけなかった。『勤務時間が終わったから』とは言えない」と子供と接する仕事特有の難しさを語る。

 

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