Wedge REPORT

2019年12月5日

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 その改革の中心となるのは学校という現場のトップである校長たち。改革の流れとして、まず校長自らがリーダーとなって校内に5~6人のプロジェクトチームを作る。重要なのはその人選だ。「育児、介護、若手、シニアなど、できる限り多様な背景を持つ先生を集めること。さまざまな考えを持つ先生同士が意識を合わせてルールを作れば、必ず学校全体に浸透する」(中原教授)。こうして集まったメンバーとプロジェクトリーダーである校長が、見える化されたデータをもとに自校の働き方に関する課題を話し合い、改革案を策定し、実行していった。

 10月に開かれた横浜市の全公立学校の校長86人を対象にした成果発表の場では、「他校の平均と自校のデータを比較することで、自分たちの働き方を客観的に見直すことができた」「教員の早番を廃止するために開校時間を遅らせようとしたところ、子供を早く送り出して出社している保護者からクレームがあった」「『自分たちの学校にとって必要だ』とみんなで話し合って決めた改革案を途中で投げ出すわけにはいかない」などの声があがった。

 ある小学校では、始業前のクラブ活動によって授業準備が満足にできないことを不満に思う教員が多かった。クラブ活動に熱心なベテラン教員からの反発もあったが、校内で議論を重ね、始業前の全てのクラブ活動の全廃を決定したという。改革を実施した校長は「教育の〝一丁目一番地〟である授業に本腰を入れることができる」と力強く語った。

「学校にお任せ」を改め
地域一体で持続可能な教育を

 業務改善だけでなく、地域や保護者の声とどう向き合うかも学校現場の課題だ。ある学校では、台風19号の際に避難場所として指定されていたが、保護者から「子供たちが避難してきているのになぜ先生が学校に来て誘導をしていないのか」といったクレームが入ったという。また、地域のお祭りなどの行事が学校のグラウンドで開催される場合、学校責任者として休日出勤を余儀なくされる教員も多い。

 学校や教員に対する地域や保護者からの期待が膨らんでいることについて、国立教育政策研究所・初等中等教育研究部 藤原文雄総括研究官は「人口減少による人手不足は地域全体の問題であり、学校だけでは解決できない。教員が双方向からの圧力に耐えきれなくなる前に、自治体、教育委員会、保護者、学校などの関係者を巻き込み、地域一体で将来にわたって持続可能な教育ビジョンづくりを進めなければならない」と警鐘を鳴らす。

 この他にも、現在発売中の本誌(Wedge12月号)では、前衛的な教育改革に取り組む戸田市教育委員会の戸ヶ﨑教育長の提言や、教育現場におけるICT活用事例(クラウド型グループウェア、AI教材)などを紹介している。

変形労働制という国の対処療法だけでは長時間労働の根本的解決には至らない。学校、保護者、地域それぞれの立場で教育のあるべき姿を再考すべきだ。

現在発売中のWedge12月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■「新築」という呪縛  日本に中古は根付くのか
砂原庸介、中川雅之、中西 享、編集部
PART 1  中古活性化を阻むしがらみ  「脱新築時代」は来るか?
PART 2      「好み」だけではなかった 日本人が”新築好き”になった理由
PART 3      米国の中古取引はなぜ活発なのか? 情報公開にこそカギがある
COLUMN  ゴースト化した「リゾートマンション」の行方
PART 4      中古活性化に必要な「情報透明化」と「価値再生」

  
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◆Wedge2019年12月号より

 

 

 

 

 

 

 
 

 

 
 

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