世界の記述

2020年5月5日

»著者プロフィール
閉じる

宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

1976年、長野県生まれ。18歳で単身アメリカに渡り、ウエスト・バージニア大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。スペインの全国紙「エルペリオディコ」で記者経験後、南仏ペルピニョンとバルセロナを拠点にするフリー・ジャーナリストとして、欧州に止まらず、世界各地を取材し、月刊誌『世界』(岩波書店)、『文藝春秋』(文藝春秋)等で、報道記事やルポルタージュを発表している。共同通信・特約記者を兼務し、フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。著書に、『卵子探しています』(小学館)などがある。

 外出禁止令は必要か不要か――。新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大防止を巡り、ノルウェーやスウェーデンなど、北欧諸国の政策が欧州連合(EU)加盟国内で注目されている。

(Art_rich / gettyimages)

 デンマーク、スウェーデン、ノルウェーのスカンジナビア諸国とフィンランドとアイスランドを合わせた北欧5カ国(総人口約2700万人)のコロナ死者は3204人(以下、すべて4月28日現在のジョンズ・ホプキンス大学のデータ)。中でも、スウェーデンの死者は2355人と突出している。

 感染拡大防止に向け、北欧はどのような対策を講じてきたのか。

 真っ先に手を打ったのは、デンマークだった。3月13日から、学校や飲食店を閉鎖し、国境も封鎖。18日以降は、商業施設の閉鎖や10人以上の会合なども禁じた。

 同国のメッテ・フレデリクセン首相は「外部からの新しい感染を持ち込まない」と国境開放には現在も慎重だが、死者は434人に抑えている。外出禁止令も解除し、学校は4月15日から再開した。

 ノルウェーとフィンランドも、緊急事態宣言の早期発出が功を奏した。ノルウェーは、3月15日から国境を封鎖。外国からの帰国者を2週間、隔離するなど、厳戒態勢を強いた。

 フィンランドは緊急事態時の資源に豊富で、周辺諸国と異なり医療物資不足には陥らなかった稀な国だ。両国はともに、死者数合わせて405人と最小限に留めることができた。

 人口36万人の小国アイスランドは、1月31日の段階から、感染の疑いの有無にかかわらず希望者全員に対し、無料でPCR検査を行った。国民の10%がすでに検査済といわれ、外出禁止令も4月27日には解除されている。

 特異なのは、唯一、別の政策に徹したスウェーデンだ。緊急事態宣言の発表もなく、外出禁止令も強制していない。飲食店も商業施設も営業を維持し、テレワークはあくまでも要請だった。

 ステファン・ロベーン首相は、3月27日の会見で「一人ひとりが責任ある行動を取るべきだ。すべてを制度化したり、禁じたりはできない」と主張。国民に判断を委ねる意向を示した。

 世論調査会社「デモスコープ」によると、国民の同首相への信頼度が3月から4月の1カ月間で、19%跳ね上がったという。

 しかしスウェーデンは、北欧5カ国で最多となる2355人の死者を出した。各国の対策に賛否両論はあるが、外出禁止令の是非による感染の影響は明らかになったといえるかもしれない。

 北欧諸国で、スウェーデン以外の首相全員が女性であることも、何かしらの成功の鍵に繋がっているのだろうか。

 

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る