2024年11月22日(金)

食の安全 常識・非常識

2020年5月13日

食塩は過剰、カルシウム、カリウムは不足

論文で日本の学校給食の例として紹介された写真 出典:Asakura K, Sasaki S. School lunches in Japan: their contribution to healthier nutrient intake among elementary and junior high school children. Public Health Nutr. 2017;20(9) : 1523-33.

松永:食塩はやっぱりどんな時も、もっとも注意して、取りすぎないようにしなければならない栄養素なのですね。それに対して、ビタミンC、鉄、食物繊維は、カルシウム、カリウムと同様に休日は一層、不足しがちになってしまう。

佐々木:このデータは、学校給食と休日の昼食の比較ではないところに注意してください。平日1日間と休日1日間に食べた栄養素を比較して、これだけ差がついています。いかに、学校給食がすばらしいかが、よくわかります。

脂質、炭水化物も、休日は不適割合が増える

松永:脂質と炭水化物も、休日の方が基準を守れていない割合が上昇しています。これはやっぱり、休日は取りすぎている、ということですか?

佐々木:脂質については、休日は取りすぎているとほぼ言えるのですが、炭水化物はむずかしいです。個人差というか、家庭の差が出て、取りすぎるこどもも足りないこどもも、両方がわずかずつですが増えていました。これには、糖質(炭水化物)制限の流行も影響しているかもしれませんが、これ以上詳しいことはこの調査ではわかりませんでした。ここまでお話ししてきたのは栄養素の話。食品は多種類の栄養素を含み複雑なので、簡単に「休日は米やパンを減らしましょう」とか「油ものを控えましょう」などとは言えません。

松永:そういうことをアドバイスする医師や管理栄養士さんはいっぱいいますよ。

佐々木:そこで、この調査では3日間の食事データ記録を用い、栄養素の過不足と食品の関係を解析しました。さきほどの栄養素ごとの結果を使って、子どもたちを次の4群に分けて、どのような食品の摂取が多いか調べてみました。ただし、この分け方はまだ確立したものではないので、今回試しに分けてみた、くらいの気持ちでごらんください。どの群の子どもたちが多い・少ない(何%いる)といった見方ではなくて、こどもたちの食べ方の特徴を4つの群で比べたかったのです。

適切群(386人[42%]):不足が気になる栄養素も生活習慣病に関連する栄養素も、すべてうまく食べている子どもたち
生活習慣病予備群(219人[24%]):不足が気になる栄養素は食べられているけれども、生活習慣病に関連する栄養素の摂取バランスに問題がある子どもたち
不足群(71人[8%]):生活習慣病に関連する栄養素の摂取バランスはよいけれども、不足が気になる栄養素がうまく食べられていない子どもたち
不適切群(234人[26%]):両方の栄養素に問題がある子どもたち
4群は、不足が気になる栄養素14種類(たんぱく質、ビタミンC、カルシウム、鉄など)のうち12種類をきちんと(じゅうぶんに)食べられているかどうか、生活習慣病に関連する栄養素は、6種類(脂質、炭水化物、食物繊維、食塩、カリウムなど)のうち4種類以上きちんと(適切な範囲で)食べられているか否かで分けた
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適切な子どもたちは、野菜や果物を多く食べている

佐々木:適切群に入ったこどもたちは全体の42%で、野菜(きのこ・海藻類を含む)や果物の摂取が多いことがわかりました。一方、生活習慣病予備群は、穀物が少なく肉類を食べる量が多いのです。不足群は、穀物、とくに精白米の摂取量をたくさん食べていました。不適切群は野菜(きのこ・海藻類を含む)や果物、大豆製品を、適切群の半分ぐらいしか食べていません。野菜や大豆製品というのは、食事メニューの中では「副菜」ですね。どうしても、肉や魚などの「主菜」に目が行きがちですが、実は副菜がとてもたいせつだということがわかります。

松永:唐揚げやハンバーグばかり、どっさり食べる、というような子どもたちが結構います。よく食べて元気、と見られがちですが。

佐々木:主菜に重きが置かれた食生活ですね。今は元気でも、おとなになってからが心配なパターンです。


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