松永:おやつや甘い飲み物のお話がでていませんが、これらに問題はありませんでしたか? こどもたちの食事といえば、間食や清涼飲料も気になるのですが。
佐々木:不足群か不適切群に入った男の子で甘い飲み物(ソフトドリンク)が多い傾向がありました。女の子にはこのような関係は見られませんでしたが、他の研究では女子大学生でも似たような傾向が観察されていますので、男女にかかわらず、甘い飲み物(ソフトドリンク)の飲み過ぎは注意すべきだと思います。
松永:まとめると、2014年の平日2日間、休日1日間の解析から、学校給食が、現代の子どもたちの栄養を支えてきたことが明らかになりました。給食を食べていても、適切に栄養を取れている、とは言えない子どもたちが相当数いる、という実態も見えてきました。今は、給食がなくなって子どもたちの食事においては、ずっと休日になっています。つまり、この調査の時点よりも、子どもたちの栄養状態は悪くなっているかもしれない、ということになります。
今、子どもたちの食事をどうしたらよいのか?
松永:では、子どものいる家庭はこれから、どんなところに気をつけたらよいですか?
佐々木:それぞれの子どもたちが家庭で食べているものは少しずつ違います。したがって、一律に、この食品がよいとか悪いとか、このメニューがよい、などとは言えません。
松永:個々人の状況を把握できていないのに、「この食品をたくさん食べなさい」などと指南するのは、一見親切に見えて、実は非科学的で押しつけに過ぎないです。だから、言いたくない、という佐々木先生のお気持ちはよくわかるし、簡単に仰らない先生を、私は一番信頼しています。でも、今は子ども一人一人の栄養状態を把握してから助言するのは非常に難しい。家で食べさせている保護者の方たちは、よくわからないまま不安を抱えています。あえて、アドバイスをいただきたいです。
佐々木:調査結果からわかるように、栄養素でいえば、減塩、カリウム、カルシウム、食物繊維の4つでしょうか。食品群でいえば、野菜・果物・大豆製品をたっぷり、牛乳・乳製品をそこそこ、そして、甘い飲み物は飲みすぎないといったところでしょう。
松永:学校給食では、牛乳200mlが付いています。取りすぎでも不足でもなく、適切な量を取る、というのが大事なのですね。食物繊維は、日本人は取る量が少ない、と言われている栄養素ですが、野菜やいも類、根菜類等を積極的に取ったらよいですか?
佐々木:食物繊維の不足による健康影響は主に生活習慣病なので、この問題が表に出てくるのはおとなになってからなのです。この意味でも、こどものときの食事は、今の健康を支えるだけでなく、「将来のからだを支えるための食習慣を身に着ける」という大きな目的を持っています。こどものうちから食物繊維の豊富な食事になじんでもらいたいと考えています。麦ごはんや胚芽米、五分づき米、野菜、いも類、果物。要するに、植物性食品で加工度の低いものなら何でもよい、くらいに考えてください。「食物繊維のかたまり」みたいな特殊なものを取ろうとするのではなく、「加工度の低いものをなんでもいいからもりもり食べよう」と考えていただきたいです。
カップ麺だって、工夫次第
松永:先生のご研究にある「不足群」は、穀類、とくに精白米をたくさん食べ、野菜や牛乳・乳製品が少ない。そこで思うのですが、主菜、副菜を細々作って食べさせる、というのは保護者にとってはやっぱりひどく面倒なのです。そのため、どうしても昼食は、おにぎりとか、冷凍パスタやチャーハンをチンして、みたいな食事になりがちです。子どももそういった昼食を喜びます。よくないとはわかっていても、「非常時だから、どうしようもない」という保護者も多いはず。がんばろうとしても、保護者もがんばれない状況にあります。
佐々木:逆説的かもしれませんが、先ほど申し上げたように、調理はしないほうが食物繊維のロスは少ないです。冷凍パスタをチンするとき、その上に、小松菜をかぶせておけばいい。ごはんを炊くとき、炊飯器の白米のうえに、大豆(炒り大豆がお勧めです)やごまを並べたりふったりしておけばいい。カップ麺にお湯を注ぐ前に、切り干し大根かカイワレダイコンか菜っ葉を突っ込んでおけばいい……って、これ、ぼくの食事ですけど。切り干し大根はその前に3分ほどお湯で戻しておくと、なおよいです。