2024年4月21日(日)

Wedge REPORT

2020年12月24日

産業技術は国家競争力の源泉
日本企業は公的機関との連携を

 SNS利用やサイバー攻撃など、手口が複雑化する経済スパイに対し、企業単独で対策を講じるには限界がある。公的機関の支援、連携が必要だ。


 独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)では、「営業秘密知財戦略相談窓口」を設け、秘密情報管理のルール整備や社内セミナーの実施など、計画的な支援を無料で請け負う。企業へアドバイザーを派遣し、営業秘密のリスト化や管理方法について、企業の実情に合わせたアドバイスも行う。既に流出や盗用が発生した場合は、各都道府県警察との連携支援も担う(詳しくは、「知的財産相談・支援ポータルサイト(https://faq.inpit.go.jp/tradesecret/)」を参照)。
 

 INPITの小原荘平知的財産戦略アドバイザーは「適切な営業秘密の区分をしないまま、コロナ禍で半ば強制的にテレワークへ移行した会社も多い。機密とすべき情報を持って帰ったり、自宅から会社サーバーにアクセスできる状況下では、漏洩リスクが高まる一方だ」と、警鐘を鳴らす。

 国家全体としての対策について、公安調査庁調査第二部の渡部亜由子第一課長は「輸出管理規制や法律制定など、技術流出防止に向けた政策決定のためには、民間企業の状況把握や分析が不可欠だ。従来の公安の業務は、企業からみれば『分からない』部分も多かったかもしれないが、今後は国内外の情報に基づく諜報機関の視点を企業側に伝えて相互理解を深めつつ、信頼関係を築いていきたい」と述べる。

 「産業技術」は国家の競争力の源泉であり、資源の乏しい日本にとってはより顕著だ。官民一体となり「技術大国・日本」を守らなければならない。

Wedge1月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■取られ続ける技術や土地  日本を守る「盾」を持て
DATA            狙われる機微技術 活発化する「経済安保」めぐる動き        
INTRODUCTION アメリカは本気 経済安保で求められる日本の「覚悟」
PART 1         なぜ中国は技術覇権にこだわるのか 国家戦略を読み解く  
PART 2         狙われる技術大国・日本 官民一体で「営業秘密」を守れ     
PART 3         日本企業の人事制度 米中対立激化で〝大転換〟が必須に 
PART 4     「経済安保」と「研究の自由」 両立に向けた体制整備を急げ   
COLUMN       経済安保は全体戦略の一つ 財政面からも国を守るビジョンを   
PART 5         合法的〟に進む外資土地買収は想像以上 もっと危機感を持て   
PART 6         激変した欧州の「中国観」 日本は独・欧州ともっと手を結べ 
PART 7         世界中に広がる〝親中工作〟 「イデオロギー戦争」の実態とは?
PART 8       「戦略的不可欠性」ある技術を武器に日本の存在感を高めよ         

  
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◆Wedge2021年1月号より

 

 

 

 

 

 

 

 


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