2022年11月30日(水)

World Energy Watch

2021年1月7日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

日本の挑戦と課題

 川崎重工業、J-Powerなどの日本企業は、日豪政府の協力のもと、褐炭から水素を製造し、排出されるCO2を貯留、回収するプロジェクトを進めている。このブルー水素は、液化、あるいはアンモニアなどにされ、日本に輸出される計画だ。経産省によると2022年の目標コストは1kg当たり約1.3ドルとされており、実現されれば十分に競争力があるレベルだ(図)。

 豪州政府は、日本、韓国、シンガポール、それぞれとの協力体制に加え、今年9月にはドイツとも水素供給に関し共同で企業化調査を行う覚書を締結しており、世界の水素供給基地を目指すとしている。豪州は、政治的にも安定しており信頼できるパートナーであることは間違いないが、水素利用が拡大する場合には、日本も供給源の多様化が必要になる。

 最もあり得る供給源は、日本国内において電解により水素を製造することだ。日本政府の数量目標は、2030年30万トンだったが、昨年末最大300万トンに引き上げられた。内42万トン以上をグリーン水素(経産省の定義では再エネと化石燃料+CCSにより製造)とすることを目指すとある。仮に年間100万トンの水素を国内で電解により製造するとした場合の電力消費量は、現状の技術前提では550億kWhになる。安定電源800万kW相当の量だ。現在の太陽光設備の発電量をほぼ全て利用する必要がある消費量だが、再エネは天候次第の変動電源なので電解設備の稼働率が低くなり、製造コストは高くなる。低炭素の安定電源と組み合わせなければ、CO2排出量ゼロの水素を競争力のある価格で製造することはできない。

 水素社会に移行するとなれば、再エネに加え安定的な低炭素電力供給力が大きな規模で必要になる。CCS付属の火力発電所ができているとしても、主力電源としては原子力が必要になるだろう。将来を見据えた電源構成を今から考えなければ水素社会実現は難しい。

  
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