World Energy Watch

2020年12月1日

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 世界の主要国は、2050年温室効果ガス純排出量ゼロに向けて一斉に走り出したようだ。ウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長、ボリス・ジョンソン英首相などに続き、菅義偉首相が2050年温室効果ガス純排出量ゼロを宣言し、バイデン次期米大統領も大統領選時の政策綱領の中で同じ目標を打ち出した。中国習近平国家主席も2060年排出ゼロ達成を国連のビデオ演説で述べるなど、各国首脳が温室効果ガスゼロを宣言している。

(Jae Young Ju/gettyimages)

 30年、あるいは40年先のことなので、中にはあまり責任感を感じずに宣言した「世界一の無責任人間」もいるかもしれないが、排出ゼロ実現のためには二酸化炭素(CO2)を排出しない電気から製造する水素の利用、CO2の捕捉・貯留などの既存技術の普及に加え、カーボンリサイクル、人工光合成などの新技術も必要になるだろう。一方、既に商業化されている技術がさらに広がることも必要だ。その代表格は電池稼働の電気自動車(BEV)とプラグインハイブリット(PHEV。以下BEVと合わせてEV)だろう。

 EVには内燃機関自動車(ICE)との比較で高価格、短い航続距離、長い充電時間、少ない充電スタンドなど消費者が購入を躊躇するデメリットがあるが、欠点を解消するためには普及が必要だ。普及のため多くの主要国が様々なEV支援策を用意している。特に欧州主要国はコロナ禍からの回復予算の一部をEV支援に当てたため、EVが爆発的に売れている。ドイツの7月から9月のEV販売台数は昨年比4倍以上だ。しかし、EV導入には思わぬ落とし穴もある。

温暖化対策に重要なのは運輸部門

 世界の温室効果ガスの大半を占めるのは、エネルギー、燃焼を起源とするCO2排出だ。その量は335億トン(2018年)だった。発電部門が最大の排出源、約40%のシェアを占めるが、次いで輸送部門からの排出量が多い。輸送部門排出量83億トン、シェアは25%に達している。航空機、船舶、鉄道などからの排出を除き自動車部門だけ取り出すと。排出量は61億トン、シェアは18%、製造業部門からの排出量62億トンにほぼ並んでいる(図-1)。

 日本の温室効果ガス排出量(2018年度)は、12億4000万トン、内CO2は11億3800万トン、エネルギー起源CO2排出量は10億5900万トンだった。部門別の内訳では、発電部門4億1800万トン、運輸部門2億300万トン、内自動車1億8100万トン。エネルギー起源CO2排出量に占める自動車のシェアは約17%だ(図-2)。

 EV使用に際しては電源構成次第で充電時にCO2が排出されることになるので、発電時のCO2排出量削減が重要になる。製造業での削減に際しても水素と並び電気が重要になるが、発電時のCO2排出量が減少しなければ電気利用の意味は薄れる。このため、バイデン次期米大統領は、2050年温室効果ガスゼロに先駆け、電力部門を2035年に脱炭素すると打ち出している。米民主党の政策綱領が再エネと並び原子力推進を打ち出しているのは、原子力抜きでは電力の脱炭素化は難しいと考えてのことだろう。EV導入と並行して電力部門の脱炭素化も進むと思われるが、現時点でのEV導入効果は国により大きく異なる。

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