2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年2月19日

 1月26日、バイデン大統領とプーチン大統領は、バイデンの大統領就任後の最初の電話会談で、2月5日に期限が迫っていた新START(戦略核兵器削減条約)の5年延長で合意した。これは米ロ間の核軍縮条約で唯一残っていたもので、これが生き残ったことは歓迎できることである。この条約の順守を担保するための検証のためのメカニズムも残るので、核兵器が米露間で使われる可能性を大きく減らす効果があると思われる。

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 トランプ前大統領は中国が入らない枠組みは認められないとの立場であったが、中国が今の核戦力レベルを高めないで交渉に応じてくることは当初から想定外であり、今後ともしばらくは想定外であろう。トランプは何を考えていたのか、よくわからない。

 米ロ双方がINF(中距離核戦力)についてはゼロオプションで縛られ、中国は自由にINFを展開しうる状況では、中国のINFを勘定に入れることで、中国と米国及びロシアの核兵器のバランスを考えてみることはあり得ただろう。しかしトランプがINF条約を廃棄した後、米ロ共にINFを配備することが可能になっているので、INFに関して中国だけが有利という考え方は成り立たないので、そういう形でバランスを考えることはできない。

 米ロ間の新STARTだけが生き残った状況で、核軍備管理・軍縮がどのように進められていくのか、なかなか見通しは立てがたい。取りあえず、生き残った新STARTをベースにして、トランプが壊したものを再構築していくということであろう。

 米大統領府は、「バイデン大統領は、米国がロシアによる行動で米国及び同盟諸国の利益を害するものには国家利益を守るためにしっかりと行動することを明確にした。そして、米ロ両大統領は、透明で一貫したコミュニケ―ションを今後維持することに合意した」と声明で発表した。ロシアの大統領府も、「プーチンは、ロ米関係の正常化は、両国さらに世界の安全保障と安定への両国の特別の責任に鑑み、国際社会の利益になると指摘した」と発表した。

 ロシアは水中無人魚雷や核巡航ミサイル、極超音速ミサイルなどの開発に取り組んでいるが、経済的にはGDPは韓国以下の規模しかなく、石油価格は今後上がる見通しはないことを考えると、とても軍拡をすすめる力はない。

 一方、中国には軍拡競争をする力はあるから、中国をうまく、中国の考えも踏まえつつ、核軍備管理、軍縮に巻き込んでいくことを考える必要がある。

 今後の米ロ関係については、人権問題やハッキングなどで難しい関係になると見ておいてよいと思われる。弁護士で野党政治家のアレクセイ・ナヴァリヌイ氏が、毒殺未遂から回復し帰国したが、1月17日に逮捕され、その後2月2日、モスクワ裁判所で実刑判決を受けた。これに対して、ロシア各地で抗議活動デモが起こり、3000人以上が逮捕されたと言われる。バイデン大統領はじめ欧州諸国の指導者らは、ナヴァリヌイ氏の即時釈放を求めている。

  
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