世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年4月13日

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 3月初め、米ブリンケン国務長官からアフガンのガニ大統領宛てにアフガン紛争の政治的解決を提示する書簡が送られた。この中で、インドが中国、イラン、パキスタン、ロシア、米国と並んで、アフガン和平の検討の正式の参加国として認められた。

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 このことは、関係国に波紋を呼んでいる。パキスタンは、インドとの対立関係から、これまでインドのアフガン和平交渉への参加に反対であった経緯があり、インドの参加には当然強い懸念を持っている。ロシアは、パキスタンとの友好関係から同じく懸念を持っている。中国の反応は分からないが、インドとの最近の関係悪化もあり、やはりインドの参加には懸念を持っているだろう。しかし、米国が正式に認めた以上、インドの参加は既成事実となった。

 アフガンの周辺国とアフガンの関係については、やはりパキスタンが目立つ。特にパキスタンとアフガンのタリバンとの関係は歴史的に緊密であった。1980年代のソ連のアフガン侵攻の際、アフガンの多くの難民がパキスタンに逃げ込んだが、その中に将来のタリバン要員もいた。また、タリバンのメンバーはパキスタンのイスラム神学校で教育を受けていた。現在、パキスタンは、タリバンの要員、家族、そしてタリバン内で最強硬派と言われる「ハッカーニ・ネットワーク」に対してすら、聖域を提供している。

 一方、インドはこれまでアフガンに対し種々の支援をしてきている。まず開発計画で、灌漑、発電、輸送、農村開発、インフラ整備などで支援をしてきた。教育の面でも支援をしている。最近では新型コロナワクチンを大量に提供した。したがってインドの参加はアフガンにとって歓迎すべきものである。

 それでは、インドの参加はアフガンの和平プロセスにどのような影響を与えるだろうか。インドは当初はタリバンに関与することは拒否してきたが、タリバンへの関与を避けなくなってきている。

 アフガン和平交渉での一つの難問は、パキスタンによるタリバンへの聖域の提供である。パキスタンもタリバンも否定しているが、聖域が提供されていることは疑いのない事実と言っていい。和平交渉ではこの問題が必ず取り上げられることになるが、米国を除く他の関係国がこの問題に関わりたくないと考えている中で、インドがこの問題の取り組むことは重要である。米国、アフガン政府もインドを頼りにするものと思われる。

 しかし、インドが正式に交渉に加わったことで、アフガン和平交渉の力学が直ちに影響を受けるとは思われない。パキスタンがタリバンに聖域を与えている問題でも、インドは問題であると指摘するであろうが、それでこの問題が動くとは考えられない。アフガンが安全で安定し経済的に活力のある国を目指すことにとって、インドの参加はアフガンにとってプラスであることは間違いないだろう。しかし、アフガンがそのような国になるにはまず恒久的な和平が確立されることが大前提である。インドの参加でこの大前提が達成される見込みが高まったとは言えない。

 インドの交渉への参加は、基本的にはアフガン和平の見通しを変えることにはならない。しかし、和平が達成された後にインドの存在の意味が高まることが確実であることを考えれば、今からインドがプレゼンスを高めることにも一定の意味はあると言ってよいのだろう。

  
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