世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年4月5日

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 第二次世界大戦後、インドは自主独立、非同盟を外交の柱にしてきたが、近年、インドは、西側諸国と外交、安全保障上の連携を深めるようになった。軍事的には、既に、数年前から、海軍の合同軍事演習として、「マラバール作戦」を展開し、インドと米国の他、日本、豪州も加わって多国間の合同軍事演習となっている。インドは、人口数から言って、世界最大の民主主主義国であり、約8億人の有権者がいる。その意味では、立派は「西側」の国家である。そして、モディ政権は、「自由で開かれたインド太平洋」地域に、大きくコミットしている。

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 米国でバイデン政権が発足して約2か月、3月12日、日米豪印の「クワッド」の初めての首脳会議がオンラインで開催され、4か国間の協力の重要性が改めて浮き彫りにされた。会議ではワクチン、気候変動、最先端技術について、それぞれ作業部会を設置することが合意され ている。ワクチンについては、東南アジアを中心にアジア諸国に新型コロナワクチン10億回分を2022年までに提供することとされた。ワクチンではインドも重要な役割を占める。インドはワクチン大国で、インドの製薬会社「セラム・インスティテュート・オブ・インディア」 がアストラゼネカとノババックスのワクチンを大量生産する契約を結んでいる。中国のワクチン外交が云々されているが、インドも中国に負けないワクチン外交を展開できる。ただしインドのワクチン外交は「クワッド」の枠内で行われることとなる。

 インドの第二次世界大戦後の独立直後の外交の柱は非同盟であった。ネルーが1954年に発表したもので、冷戦のさなかにあって、米国、ソ連 のいずれの陣営にも属さないことを表明した。 非同盟政策はいわば冷戦の産物とも言えうるものであり、ソ連の崩壊とともにその意味を失っている。

 インドが西側諸国との関係を重視するようになった背景には中国の台頭がある。3月12 日の「クワッド」首脳会議の後に発表された声明では、4か国の首脳が「東シナ海及び南シナ海における、国連海洋法条約を含む国際法をはじめとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対応するために連携することで一致した」と述べられている。中国を名指しはして いないが、中国を念頭に置いての見解であることは明らかである。クワッドの首脳会談後には、バイデン政権で国防長官に就任したオースティン長官が、日本と韓国の後、インドを訪問し、米印国防大臣会談がニューデリーで行われた。ここでも、インドのシン国防大臣とオースティン国防長官との間で、平和で安定的なインド太平洋地域の為に、両国の連携が欠かせないことが確認された。

 米印関係の変遷の中では、核の問題が重要な役割を果たしてきた。1974年にインドが「平和的核爆発」と称して核実験を行うと、米国は強い懸念を表明し、非核国における濃縮と再処理を禁止する方針を明らかにした。その後、2007年7月、米印両国は、原子力協力協定を結び、インドは民生用原子力施設にIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れることに合意し、米国は原子力関連の技術と燃料の供給についてインドに協力することを表明している。米国が、インドの軍事用原子力施設にはIAEAの査察が行われないことを認めたことは、米国がインドをNPT上の核保有国としては認めないが、事実上の核兵器国として認めたことを意味すると考えてよい。

 日本にとって、インドが西側諸国との関係を強化することは歓迎すべきものである。自由で開かれたインド・太平洋は、日本にとって特に重要である。日本とインドはそのようなインド・太平洋の確保、維持のために積極的に協力して いくこととなるだろう。

 今夏、英国で開催される予定のG7(西側主要先進諸国)サミットでは、日米英仏独伊加(プラスEU)の7か国の他、豪州、韓国と並びインドが招聘されている。西側の一員として、インドの役割は大きくなって行くだろう。

  
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