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2021年5月11日

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東京大空襲に関して無関心な日本人

 筆者のグラッドウェルは世界各地で、戦争に関する立派な博物館をいくつも見てきている。それと比べて、日本における東京大空襲の扱いがあまりにも軽いことに驚いたわけだ。特に、日本人が広島や長崎に比べ、東京大空襲に関して無関心なことに疑問を持つ。次のように補足している。

Despite the incalculable loss of life, there remains no government-sanctioned memorial in Japan to the March 9 attack. Survivors of that night, who call themselves “memory activists,” have struggled to commemorate the Tokyo raid in the face of political and public apathy. Eventually they funded their own memorial―the Center of the Tokyo Raids and War Damage.

「多くの人命が失われたにもかかわらず、3月10日(米国時間で3月9日)の東京大空襲に関する公的な博物館が日本にはない。東京大空襲の被災者たちは、自らを”記憶の語り部”と称しているものの、東京大空襲の記録を残し追悼するのに苦労してきた。政治や社会が無関心なのだ。結局、自分たちで資金を集めて、東京大空襲・戦災資料センターを設立したのだ」

 アメリカ人の人気作家に、日本人が東京大空襲に対して無関心であることを指摘されるのはなんとも恥ずかしい。おまけに、取材した歴史研究者が語ったという次の体験談には日本人として愕然とした。

The historian Conrad Crane told me:

I actually gave a presentation in Tokyo about the incendiary bombing of Tokyo to a Japanese audience, and at the end of the presentation, one of the senior Japanese historians there stood up and said, “In the end, we must thank you, Americans, for the firebombing and the atomic bombs.”

That kind of took me aback. And then he explained: “We would have surrendered eventually anyway, but the impact of the massive firebombing campaign and the atomic bombs was that we surrendered in August.”

In other words, this Japanese historian believed: no firebombs and no atomic bombs, and the Japanese don't surrender. And if they don't surrender, the Soviets invade, and then the Americans invade, and Japan gets carved up, just as Germany and the Korean peninsula eventually were.

「歴史家のコンラッド・クレーンは次のような話をしてくれた――。

東京で日本人向けに焼夷弾による東京大空襲について講演したことがある。講演の終わりに、日本人の高齢の歴史家が集まっていた中で1人が席を立って次のように言った。『結局、日本人はアメリカによる空襲と原爆投下に感謝すべきだ』と。

この発言にはちょっと驚いた。その男性は続けてこう説明した。『日本はいずれにせよ降伏するしかなかった。しかし、焼夷弾による大空襲と原爆投下の衝撃のおかげで日本は8月に降伏したのだ』

別の言葉で言えば、この日本人はこう思っているわけだ。焼夷弾や原爆がなかったら日本は降伏しなかった。そして、日本がもし降伏しなかったら、ソビエトが日本本土に侵攻し、続いてアメリカが侵攻し、日本は最終的にドイツや朝鮮半島のように切り裂かれただろう」

 本コラムの評者も正直なところ、第2次世界大戦について日ごろは関心はない。むしろ、アメリカの歴史ノンフィクションで日本に関連する史実を学ぶことが多い。自分の無知を恥じるばかりだ。東京大空襲に関しても、本書を読んで初めて知ったことが多い。

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