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2021年6月21日

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 「無人航空機(ドローン)は、連続使用で必ず落ちる。いくら法律を改正しても、機体の信頼性の問題を解決しない限り、配送ドローンが街中を飛び交う未来は訪れないだろう」

ANAHDやドコモ、セブン・イレブンなど、多くの国内企業がドローン物流の事業化を目指すが道のりは険しい (AVIATION WIRE/AFLO)

 カスタムドローン開発を担うZENBOT(東京都渋谷区)の代表取締役であり、自身もソフトウェア開発エンジニアである千財悟郎氏はドローン物流の普及に関して、こう警鐘を鳴らす。日本のドローン活用に未来はあるか。

 6月4日、ドローンの飛行可能範囲拡大に向けた改正航空法が成立した。これまで禁止されていた有人地帯でのドローンの目視外飛行について、2022年度から、機体および操縦ライセンスの認証を得ることで可能となる。都市部を含めた第三者上空でのドローン活用を、政策が後押しした形だ。

 日本におけるドローン活用については、15年に開催された未来投資に向けた官民対話の場で、安倍晋三首相(当時)から「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」との政府方針が示され、同年12月、官民協議会が立ち上がり、現在も続く、国土交通省、経済産業省、農林水産省など各関係省庁間および民間事業者との連絡会が開催されるに至った。同協議会が作成・公表する「空の産業革命に向けたロードマップ2020」によれば、物流分野において、改正された航空法が施行される22年度以降に「都市を含む地域における荷物配送の実現・展開」を目指していくという。

 規制緩和が進む一方で、ドローンはその構造上、決して輸送に適しているとは言えない。雨や風といった天候の変化に弱く、バッテリー駆動のため航続時間・距離が短い。また、有人地帯飛行における安全性の確保ついて、ドローン研究の第一人者である、千葉大学の野波健蔵名誉教授は「日本の都市部は海外と比較して人口密集地帯が多いため、機体トラブルが発生した場合に不時着場所を探すのが困難だ。落下の衝撃を抑えるパラシュートを備えるなど、新たな安全性能が求められる」と指摘する。

 前出の千財氏は「空を飛ぶ飛行機やヘリコプターの多くは操縦系やエンジンに冗長性が備わっており、さらに重大なトラブルに対する最後の砦としてパイロットによるマニュアル飛行を有し、多重系により高い安全性を担保している。一方、小型で無人のドローンは冗長性がなく信頼性や耐久性も低いため、連続使用による機体トラブルが発生すれば即、落下につながる」と述べる。

 そもそも物流分野でのドローン活用は広がっているのか。現在、ANAホールディングス(HD)、日本郵便、楽天、ヤマトホールディングスなど、多くの国内企業が参画し、将来の労働力不足や過疎化の進行に対する新たな輸送手段の候補として、全国の離島や山間部で事業化に向けた実証実験が行われている。

 ANAHDは3月、武田薬品工業と共同で、ドローンを用いて長崎県五島市の離島へ医薬品を配送する実証実験を行った。ドローンの整備や飛行管理に関する独自のマニュアルやチェックリストを作成し、空の安全運航を担ってきたノウハウを生かす。

 同社のドローンプロジェクトを指揮する信田光寿氏は「第三者上空の飛行が禁止されている現在は、住宅地を避けてルートを迂回したり、侵入禁止の立て看板を置いたりして対応しているが、法律改正により、飛行の最短化と低コスト化を図ることができる」と期待を込める一方で、今後の課題もにじませる。

 「ドローンは即時性が高いものの、一度に運べるロットが小さく、利用者の少ない離島や山間部ではスケールメリットを生みづらい。事業化には、国や自治体の継続的な支援が必要だ」

 ドローン物流の事業性について、前出の野波名誉教授は「将来的には、市場規模の大きな都市部や人口密集地でも事業化していかなければ採算が取れないだろう」と指摘する。一方で、国土交通省の物流政策担当者は「都市部での輸送は、コスト・効率性の両面で既存のトラック輸送が適していると考える物流事業者も多い。行政サービスとしての傾向が強い過疎地域でのドローン物流をどう事業化していくかについては民間事業者の創意工夫が求められる」と述べ、手探りの状態が続く。

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