芸能人の不祥事はたびたび世間を騒がせます。
ドラマや映画の出演者が違法薬物で逮捕されたような場合、作品の放送や配信が中止されたり、公開が延期されたりすることは珍しくありません。
これまで、芸能人に不祥事があった場合、関わった作品ごと制裁を受ける形になるのが半ば当たり前でした。
しかし、ドラマや映画は他の出演者やスタッフが関わっていますので、一人の不祥事によって、関係者全体にダメージを与えるのはいかがなものかという感があります。作品の評価と出演者の不祥事は無関係だとする意見も少なくありません。
この度、映画「宮本から君へ」に関して、出演者の薬物事件を理由に助成金の交付が受けられなかったことについて、交付しないとする決定を違法とする判決が東京地裁でありました。
この判決は、出演者の不祥事と作品全体の評価のありかたに一石を投じるものであるだけでなく、芸術・創作分野と表現の自由のありかたについて重要な示唆を含むものだといえます。
出演者の不祥事により取り消された助成金内定
今回の訴訟は、映画「宮本から君へ」の制作会社が、芸術分野の助成金事業を行う独立行政法人日本芸術文化振興会に対し、一度内定した助成金が取り消されたことについて違法であると訴えていたものです。
経緯によると、制作会社は独立行政法人に映画製作の助成金を申請し、いったんは助成金の交付を受けることが内定していました。
制作会社は、助成金を受け取ることを前提に映画を制作したのですが、完成した後になって出演者の1人が薬物で逮捕され、有罪の判決を受けてしまいました。独立行政法人はその段階で、助成金交付の内定を取り消し、「助成金を交付しない」という決定をしたものです。
独立行政法人はその理由として、「助成金が公金を財源とするものである以上、公益性の観点から不適当な場合には内定を取り消される場合がある」、「出演者に薬物事件があったにもかかわらず助成金を交付した場合には、『国が薬物に対して寛容な姿勢を取っている』というメッセージを送ることになりかねず公益性に反する」などを挙げています。