世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年1月27日

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 2021年12月29日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)社説が、ソロモン諸島は中国の警察の支援を受け入れることに合意した、今回の中国進出を見れば米国は南太平洋にもっと大きな関心を払うべきだと述べている。

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 21年11月24日に始まったホニアラの暴動は、豪州などの部隊の介入により一応抑えられた。しかし12月23日に、豪州が治安部隊の大半を撤収する予定であることを認めるや否や、中国はソロモンに警察装備の提供と数人の警察訓練要員の派遣を申し出た。

 WSJの社説は、将来の騒擾事件を契機に中豪両国の部隊が直接衝突する可能性もある、米国は太平洋島嶼国と中国の関係についてもっと関心を持つべきだと述べている。正にその通りだ。中国が太平洋島嶼国との戦略的関係を強め、プレゼンスを確立することは、太平洋において「点」の掌握のみならず「面」の掌握にもなり、米国等の太平洋へのアクセスと行動を難しくする。

 米軍は既に強い危機感を持っていると思われるが、米豪日を中心に関係国は政策協調と協働行動のために早急に協議をすべきである。社説は香港での警察の弾圧行動に注意を喚起するが、今回の中国警察要員のプレゼンスは軍事的プレゼンスに繋がりかねないものだ。カザフスタンで今起きていることが脳裏を過る。

 中国の警察要員の派遣などが如何にして合意に至ったのか、正確な経緯は未だ明らかでない。豪州は全く知らなかったのか、そのような危険を予知できなかったのか。親中派の首相ソバガレ(19年に外交承認を台湾から中国に変更)と中国の共謀なのか。11月の暴動以後、豪州とソバガレの間で何らかのやり取りが行われてきたのか。西側が中国側にアウトマヌーバーされたのであれば、それは由々しいことだ。中国の巧みな忍び足の手際良さが目に付く。

 今回の事態の発展を見ると、11月のソロモン諸島の暴動は、一部の専門家が言うような一義的に国内経済や地域間の対立に起因するとの見方よりも、背景に中国の地政学的進出の野心が作用していると見る方が正しいと思われる。中国の太平洋進出戦略が現状変更を狙うものであることとその攻撃性に注目せざるを得ない。

 それは、単なる経済的、外交的目的に留まらず覇権的な行動だと見るのが必要なようだ。また豪州など部隊の撤退の機を逃さない中国の対応の機敏性にも印象付けられる。更に中国は、進出に当たり土地や金銭の提供など不規則な手段を使用していると言われる。これが中国進出の手法なのである。

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