2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月4日

 いずれにせよ、トレス新首相の立ち位置や、ペルー・リブレ所属の閣僚が何人か入閣したことから、カスティージョ政権が軸足を左に戻した印象がある。いずれにせよ、カスティージョが今後も側近らのインナーサークルの助言に頼るのであれば、頻繁な政策変更や発言の撤回の傾向は変わらず、政治的混迷が引き続くことは免れないであろう。フジモリ派などの右派は、混乱を招いたカスティージョの辞任を求め、新内閣を揺さぶり弾劾の機会を今後も窺うであろう。

軍部クーデターの可能性は?

 大統領、首相が議会議長や中道派と協力して、議会における多数派を形成する協約のようなものができる可能性は、大統領の能力、過去のしがらみ、利害関係の交錯から、低いと言わざるを得ない。他方、カスティージョの議会による弾劾もハードルが高く、仮に弾劾に成功しても昇格する副大統領も同様の困難に直面するであろう。一部に、軍部のクーデタの可能性を論ずる向きもあるが、望ましくないし、現実の可能性も低いであろう。

 大統領制の下で価値観の分裂により小党が分立する結果、議会に十分な基盤を持たない大統領と議会が対立し機能が麻痺してしまう状態は、制度的に避けられない現象であろう。前政権では、昇格した副大統領も弾劾され、結局議会で暫定大統領を選出することで政局はとりあえず安定した。

 現在のペルーの制度の下では、さまざまな国民の要求を集約し多数派が形成される政治過程の仕組みができておらず、政治指導者にそのような問題解決の能力がないのであれば、当面現在の政治的混迷から脱出することは難しいであろう。

   
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