2022年10月6日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月22日

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 米国が支援する野党指導者のグアイドも、マドゥロ政権がメキシコでの交渉に復帰するための制裁の部分的緩和を要望し、米国議会内にもこれを支持する動きもあった。マドゥロ政権としてもとにかく経済制裁を緩和することが最優先の要求であった。

 従って、バイデン政権が、民主化への歩み寄りや米国人の解放などを条件に、ベネズエラ原油の禁輸を解除することにより、ロシア原油禁輸による供給不足に対応することは一石二鳥の極めて効果的な政策であるばかりでなく、マドゥロからも野党側からも歓迎されるものであった。

 他方、米国議会の共和党強硬派は、こうした措置は独裁政権を強化するものであるとしてマルコ・ルビオ上院議員らを始めとして強く反発しており、民主党の人権重視派のメネンデス上院外交委員長らからも民主化への進展が保証されず、フロリダ州でのヒスパニック票の支持を失うとして批判も出ている。

マドゥロ政権が吹き返しては逆効果

 他方、例え禁輸措置が解除されたとしても、ベネズエラの原油生産能力は設備の老朽化やマネージメントの不備で著しく低下しており、増産傾向にはあるがすぐにはロシア原油の供給量をカバーできず、当面の効果は限定的とも見られる。従って、今回の米側のイニシアティブは、当面石油については市場への心理的効果を狙うと共に、重点は行き詰ったベネズエラ政策を活性化し、民主化へ向けて関与することによりベネズエラ問題に新たな展開をもたらそうという狙いがあるとも思える。

 マドゥロは、ウクライナ問題ではロシアを明確に支持しているが、とにかく制裁を緩和することが最優先であり交渉に前向きであるが、それは見せかけの手段であって、実質的な民主化に応ずるつもりはないのではないかと疑われる。従ってこのようなイニシアティブが成功するかは、米国の制裁緩和の条件としてベネズエラ側が公正な選挙の実施、人権の尊重等でどのような具体的措置をとるかにかかっている。

 制裁緩和で多少のベネズエラ原油が調達できるとしても、それでマドゥロ政権が経済的にも息を吹き返し、他方、人権侵害は改善されず民主化も進まないのであれば、バイデン政権は国内的にも厳しい評価を受けることになろう。

  
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