2024年7月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年6月20日

 米国では、8%を超えるインフレを受けて、政権内外で、トランプが2018年に導入した対中制裁関税(3000億ドル超の産品に掛けている)を引き下げるよう求める声が高まっているようだ。ワシントン・ポスト紙の5月30日付け社説‘It’s time for Biden to lift Trump’s China tariffs’は、米国内のインフレ抑圧のためにバイデンはトランプの対中制裁関税を撤廃する時だ、と主張する。正論だ。

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 トランプの関税は、米中貿易関係を改善したというよりも、米国の消費者、生産者双方にコストを掛けることになった。競争力のない一部の米企業とその労働者は保護から利益を得たかもしれないが、経済的に理屈に合わない政策であったことは最初から分かっていた。それが4年も続いている。

 バイデンもトランプ関税を批判してきたが、それをそのままにしてきた。それではトランプと同じ政策になる。制裁関税の撤廃は中国と取引し、もっと早く撤廃すべきだった。ピーターソン国際経済問題研究所の試算によれば、対中制裁関税の撤廃はインフレを直ちに0.3%下げ、潜在的には向こう1年で1%以上インフレを下げる効果があるという。

 しかし、撤廃の議論はなかなか動いていない。米通商代表部(USTR)は5月3日、対中制裁関税を見直す作業を始めると発表した。イエレン財務長官などがインフレ抑圧のために当該関税撤廃を求めている。

 それでも、政権内部の意見は割れている。タイ通商代表、ビルサック農務長官、国家安全保障会議(NSC)のサリバン等は撤廃に反対、他方イエレン、ライモンド商務長官などは産業界、消費者の利益を考え、撤廃に賛成の主張をしていると言われる。


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