2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年6月30日

 ウクライナでの戦争が長引くにつれ、時間はウクライナに味方するかとの問題を提起する論調が目に付くようになってきた。

Egor Novikov / iStock / Getty Images Plus

 例えば、ブルッキングス研究所のマービン・カルブとヘンリー・アーロンがウクライナ戦争に対する西側の結束を脅かすひび割れが生じでいることを指摘して、時間はウクライナに味方するかという問題を論じている(‘Is time on Ukraine’s side?’, Brookings, June 10)。

 ウクライナ東南部の攻防においてウクライナが守勢に立たされる戦況と軌を一にして、5月19日のニューヨークタイムズ紙の社説‘The War in Ukraine Is Getting Complicated, and America Isn’t Ready’、5月23日のダボス会議におけるキッシンジャーの発言(「2カ月以内に交渉が始まる必要がある」「理想的には2月24日の線への回帰である」「それを超えて戦争を続けることはウクライナの自由についての戦争ではなく、ロシア自体に対する新たな戦争となろう」などと発言)、6月4日の「プーチンに屈辱を与えないように」とのマクロンの発言などがいずれもウクライナはいずれ和平と交換に領土的譲歩を迫られようことを示唆し、西側の結束に乱れが見え始めたことに着目したものと思われる。

 最も重要なことは、ウクライナと米国が戦争目的を共有していけるかにある。ゼレンスキーは完全な主権回復が究極の目標であるが、2月24日の線までロシアを押し返せれば「厳粛な暫定的勝利」となると述べている――その意味は2月24日の線まで押し返せれば、交渉が可能となり、その後は西側の制裁と外交によってクリミアを含む完全な主権回復を目指すということであろう。

 バイデンの目標はゼレンスキーの目標と非整合的ではない――キッシンジャーとは異なり領土的譲歩を求めてはいない。バイデンは5月31日付けニューヨークタイムズ紙に掲載した一文において「この危機における自分の原則は『ウクライナを抜きにウクライナに関する決定はない(Nothing about Ukraine without Ukraine)』ということである。自分はウクライナ政府に如何なる領土的譲歩を為すよう――内々にも公にも―圧力を加えることをしない」と書いている。


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