2022年12月4日(日)

ニュースから学ぶ「交渉力」

2022年7月5日

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田村次朗 (たむら・じろう)

慶應義塾大学法学部 教授、弁護士、米ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー

慶應義塾大学法学部卒、米ハーバード・ロー・スクール、慶應義塾大学大学院。ブルッキングス研究所、米上院議員事務所客員研究員、米ジョージタウン大学ロースクール兼任教授を経て現職。著書に『ハーバード×慶應流 交渉学入門』(中央公論新社)、『リーダーシップを鍛える「対話学」のすゝめ』(共著、東京書籍)、『16歳からの交渉力』(実務教育出版)など多数。

 選挙活動が展開されている参議院選挙は7月10日に投開票が行われる。今回は、政治リーダーがどのような交渉力を持つべきか、私たちはどう選ぶべきかを考えてみたい。なお、和やかな雰囲気を重んじる「会話」や、対立を前提として勝敗を決める「ディベート」とは異なり、「対話」は、同じく対立を前提としながらも、傾聴し協働することで問題解決に導くよう努めることである。

参院選では、いかなる候補者の対話力を見るべきなのか(Pasya/アフロ、写真は一部加工してあります)

 政治家と国民との関係においてまさに重視されるべきは対話であるため、この「対話力」について解説する。

政治家が行う政策立案のための対話

 市区町村会議員、都道府県会議員、国会議員と、私たちは選挙を通して自分が住む地域のさまざまな「代表」を選んでいる。政治家は私たちの代表である以上、私たちが何を求めているのかを把握する必要がある。

 国会議員であれば、平日は永田町で国会の審議に参加して政府に予算案や法案等について質問し、争点となっている事柄のメリットやデメリットを明らかにしようと努める。一方で、土日になると地元の選挙区に帰って活動報告を行ったり、住民の要望を聞いたりする。「〇〇後援会」や「タウンミーティング」と言われる場において、住民と「対話」を重ね、国民の意見としてそれらが政策に反映されるよう努力することが求められている。

 こうした活動で重要になるのは、利害関係者の視点を意識することである。政治家が開催する集会などに参加する人は、その政治家の支援者や政治参画への意識が高い人が大半と見られ、そうした人たちの割合は社会の一部に過ぎないのが現実だろう。また、そこで展開される意見は偏っている場合も多い。

 実際には、反対の意見や別の問題を重視する方が世論的には多いかもしれない。すなわち、声を上げている人の意見が必ずしも多数派ではないということである。これは少数意見を無視すれば良いというわけではなく、俯瞰的な全体把握が求められることを指している。

 かつて、米国のリチャード・ニクソン元大統領が「サイレント・マジョリティ(静かな大衆)」という言葉を使った。当時、ベトナム戦争に対して反戦運動が行われていたが、それが大多数の米国民の考えを象徴しているとは言えない、という趣旨で用いられた。

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