2024年12月28日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年7月7日

 フランス国民議会選挙でマクロン大統領が絶対多数を失い、極左と極右の勢力が台頭するという衝撃的な結果について、英国ノッティンガム大学の政治学者のドロションが、6月21日付のProject Syndicateで、フランスが妥協の時代へ向かうのか又は行き詰まりの時代へ向かうのか、見極める必要があると論じている。

Andrii Tkachuk / HStocks / iStock / Getty Images Plus

 フランス国民議会選挙において、マクロン派が245議席にとどまり、単独過半数の289に達せず相対多数に留まり、極左のメランションを盟主とする左派連合が131議席で第2党に、極右のルペン派が議席を10倍に増加する89議席へと大躍進を遂げた。メディアや分析筋は、予想外の結果としつつも、そうなった原因を解説し、第2期マクロン政権は前途多難であるとの論評を行っている。

 ドロションの論説も基本的には同様であるが、今後の展望等については、参考となる内容になっている。マクロンは、4月の大統領選挙でルペンに17%の差をつけてシラク以来の現職大統領の再選を勝ち取ったが、これは、マクロンかルペンの選択において、左派系の有権者も含めてマクロンを選んだに過ぎず、第1ラウンドでのマクロンへの支持票は28%に過ぎなかったことを思い出すべきであろう。

 また、昨今のエネルギー価格の高騰やインフレによる生活圧迫が与党側に逆風となったことは否めず、有権者の中には大統領選挙ではマクロンに勝たせたのだから、議会選挙まで大勝利させることはないとの意識が働いたようにも感じる。議会選挙では、各選挙区で決戦投票に残らなかった左派又は極右派支持の有権者は、他方の候補を支持してマクロンへの反感を優先させ、右派や中道派の有権者がポピュリズムを押しとどめる「共和国戦線」も機能しなかった。

 しかし、ラテンアメリカの政治状況のように国内が左右両極のポピュリストにより分断されるのではなく、マクロンの中道派が依然として最大多数派であることは、フランスにとって大きな救いであろう。マクロンがいなければ、大統領選挙も議会選挙もメランションかルペンかの選択になりかねなかった可能性がある。

 また、今後の政権運営が前途多難と云っても、この論説が指摘するように、61議席を得た共和党の協力を得て、或いは、生活支援、年金改革、気候変動対策等テーマごとに個別に野党に働きかけて、過半数を獲得する政治工作も不可能ではない。

 共和党も直ちに一致してマクロン派と連立を形成する様子は無く、案件ごとに対応ということになりそうである。左派連合も「不服従のフランス」、緑の党、社会党の寄せ集めで、議会では個別の会派として活動するようであり、メランション自身が立候補していないので議会で誰が左派連合のリーダーシップをとるのかも不明である。


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