2024年11月21日(木)

勝負の分かれ目

2022年8月23日

 球児たちの熱戦に幕が下ろされた。第104回全国高等学校野球選手権大会は8月22日に決勝戦を迎え、仙台育英(宮城)が下関国際(山口)を8―1で下し、初優勝を飾った。春夏通じて43度目の聖地出場を誇る古豪はこれまで一度も日本一に手が届かなかったが 7年ぶり3度目となる同大会決勝進出で悲願のVを達成。東北勢としても春夏合わせて初の全国制覇を成し遂げ、ついに深紅の大優勝旗が「白河の関越え」を果たすことになった。

(dwall817/gettyimages)

 その一方、敗れた下関国際の面々も甲子園球場のスタンドから優勝校の仙台育英と遜色のない万雷の拍手が送られた。今大会では準々決勝で今春センバツ優勝校の絶対王者・大阪桐蔭(大阪)、同準優勝の近江(滋賀)と高校野球界屈指の強豪チームを次々と破り、これまで最高位だった2018年大会ベスト8の壁も突破した。

 山口県勢としては8度目の決勝進出だったが、1958年の柳井以来64年ぶりとなる頂点の座にはあと一歩及ばず。それでも今大会における下関国際の快進撃は地元・山口県民や中国地方に所縁のある人たちみならず日本中の人々の魂を揺さぶった。

見る人の涙を誘った指揮官の言葉

 本校はチャレンジャー――。これは下関国際を率いる坂原秀尚監督が今大会を含め試合後に幾度となく口にしてきた言葉である。

 今大会で大躍進を遂げた下関国際の戦いぶりに多くの人たちが共感を得たのは、強豪相手にも臆せず屈することない選手たちに不撓不屈の精神を感じ取ったことも理由の一つだろう。そして挑戦者だからこそ絶対に諦めず最後まで食らいついていくという教えを部員に徹底させた坂原監督の熱心な指導力とひたむきな姿勢にも、きっと誰もが心を震わせたはずだ。

 大会決勝戦の終了直後、閉会式が行われる直前のことだった。甲子園のグラウンド上で泣き崩れる下関国際のナインをベンチに呼び寄せ、坂原監督が「下関に覚悟を持って来てくれた。うちに来てくれてありがとう」と感謝の言葉を述べる感動的な場面があった。

 そしてベンチ前に出て整列した選手たちの前で歩を止め、一人ずつ肩を叩きながら「この舞台に連れて来てくれてありがとう」と再度謝意を口にし、向き合った。まるでドラマのワンシーンを見ているかのような異例の光景はNHKやABC朝日放送のテレビ中継でも映し出され、多くの視聴者の涙を誘った。


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