寄附受入に成功した地域はどこなのか
以上のことから、このふるさとの納税制度は都市の裕福な市民が、他地域に寄附を行った結果、都市部の自治体では寄附の控除が増加し、その分を地方の自治体に再配分する機能をもたらしたといえる。その意味では、ふるさと納税の当初の目的の1つは達成されているといえよう。
ただし、問題が2つ指摘できるであろう。第1にこの事業は、各自治体が税源を奪いあうだけの基本的には「ゼロサムゲーム」であることである。したがって、8000億円あまりの寄付総額は日本国で新たに生み出された財源とはいえない。市区町村民税の収納先が右から左に移っただけである。
次に、費用構造の項目で見た通り、1000円の寄附を得るためにおよそ500円の費用がかかっているという問題である。したがって、8000億円の50%が費用であるならば、新たに生み出された価値はない中で、この制度の運営費用の分は新たに生じたコストといえる。
百歩譲って、費用50%のうち返礼品調達の平均3割分(2400億円)は地元産業の振興策として価値を認めたとしても、残りの20%(約1600億円)は事務的な費用なので、2400億円の地域振興策に対する費用1600億円の占める割合は66.7%とかなり高いものといえよう。
「ふるさと納税で最も寄附受入に成功した地域はどこか?」という問いに対しては、寄附控除額よりも受け入れ額が大きかった北海道の紋別市や根室市であったり、1件当たりの金額が高かった東京都江戸川区や徳島県神山町と言えるかもしれない。しかし、全体を見ると、ゼロサムゲームどころか経費が50%かかっている効率性は悪い制度となってしまっている。
自治体とって、この事業に経費50%の「投資」に意味を持たせるためには、ふるさと納税で関係を持った人口を生かすことだろう。観光による来訪や一般の通販市場での地元物産の定期的な購入、将来的には住み替えやセカンドライフの場所として選択してもらえるように、2次・3次のPRを続けていくことが求められる。