2024年7月16日(火)

都市vs地方 

2022年10月27日

自治体事業としての効率性を考える

 ここまでは、件数と金額の面からランキング付けをすることを通じて、寄附受け入れには「効率性」があるのではないかという話をした。以下では、より具体的に、寄附受け入れを「行政の事業」としてみた場合に、効率性を評価することに焦点を当てて考える。

 効率性といった場合にまず考えられる指標は、寄附1件当りの平均金額である。寄附の件数は多くなればそれだけ受入金額も多くなるが、その寄附に対応して事務手続き等も増加していく。

 最も効率的なケースは、たった1人の大富豪が1回の事務手続きで巨万の寄附をしてくれる場合といえよう。逆に少額の寄附が多数殺到すると、事務手続きの手間もかかってしまう。10万円の返礼品を1カ所に送るよりも、1万円の返礼品を10カ所に送ればそれだけ送料もかさむ。

 ただし、件数が多いことは必ずしもデメリットとは言い切れない面もある。各自治体にとっては、ふるさと納税の目的が単に金銭的寄附を受け入れることだけではなく、自らの自治体を全国に知らしめる広報的な効果も期待できるからだ。

 寄附を通じて、遠く離れていても当該地域とつながりを持ったり応援したりする人口(いわゆる「関係人口」)を増やすという効果も狙っているとするならば、金額はともかく一人でも多くの人に寄附を通じて結びつきを深めるというメリットも考えられる。その意味では、表2のいわゆるジャンプアップ自治体は寄附額(=返礼品)の金額対比でより多くの人と結びつきを持てたともいうことができる。

 さて、気になるふるさと納税寄附受入1件当たりの平均金額のベスト30を見てみよう。表3の結果は、これまでのランキングと大きく異なっていることが分かる。

 表3には金額・件数でのベスト30の自治体は1つもランクインされていない。金額ランキングでは、ベスト30はおろか100位以下の自治体が並び、件数ランキングに到っては全てが1000位以下、さらには1700位を下回る下位の自治体も散見される(総務省資料による自治体数が1741件なのでかなり下位である)。

 また表中で緑色に示した東京23区の自治体が10件ランキングしていることも特徴的である。表の中を見ると、件数が数件から2桁というケースも多く、必ずしも1件当たり大きな寄附額をどんどん集めているという状況ではないようである。表中では、8位の軽井沢町、24位の伊豆市、25位の森町などは1件当たりの金額も多く、受入件数も4桁に達し、効果的に寄附を受け入れていることが見て取れる。

もう一つの効率性である費用構造

 単なる寄附受入総額や1件当たりの平均寄附金額だけで、自治体側にとってのふるさと納税の効率性を判断することは難しいことが分かった。そこで、以下では寄附を1円受け入れるために要した経費を用いて、事業の効率性を判断することとしたい。

 まず、ふるさと納税のために実際どのくらいの費用支出がかかっているのであろうか。表4は21年度実績でのふるさと納税の受け入れとそれに要した費用の内訳である。

 これを見ると、全国のふるさと納税8300億円余りの寄附を受け入れるための事業経費として約3850億円がかかっていることが分かる。要した費用の比率は46.4%であり、1000円寄付を受け入れてもその半分の500円近くが経費になってしまったこととなる。なお、経費のうち「返礼品等の調達に要した費用」は27.3%で、寄附のお礼の品の価格は3割が目安という基準を反映しているといえる。この返礼品が地元産品であり、地場産業の売上促進と、全国マーケットへのPR効果ととらえると、全くの無駄な費用ということとも言い切れないであろう。


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