2024年12月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月31日

 10月16日から22日まで、中国共産党第20回大会が開催された。かねてより言われていた筋書き通り、習近平が党の指導者として3期目を務めることとなったが、中国の対外政策としては〝要塞中国〟の考え方が強く打ち出された点が注目される。〝要塞中国〟というのは、エネルギーや先端技術の対外依存を低め、金融・経済を強化し、軍事衝突にも耐える力を高めるよう、中国を再構築する方針である。

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 フィナンシャル・タイムズ紙は党大会が開催されている最中の10月19日に「〝要塞中国〟の習近平による支配は分水嶺の時である。彼の指導者としての再就任は国内外の脅威と戦う努力の中で行われる」との社説(“Xi Jinping’s control of fortress China is a watershed moment”)を掲載している。主要点は次の通りである。

・大会の重要性は中国の政策とその世界への向き合い方を承認することにある。これらのうち、最も重要なのは「すべての安全保障化」である。習の「包括的国家安全保障」概念は、政治、経済、文化、技術、宇宙、海外での利益を含む16の異なる分野からなる。

・10月16日の演説で、習は過去100年間に見られなかった「深刻な国際的発展」について警告を発した。毛沢東以来最も力のある指導者は外国による「いじめ」を強く非難し、軍事力によってでも、台湾を支配する約束を繰り返した。

・この脅威メンタリティが習の世界観を支配している。2021~25年の国家安全保障戦略(21年に採用されたが未公表)は、中国の拡大する安全保障空間へのすべての内外の脅威と戦うように党及び政府を活気づけることを求めている。

・米国が主導する西側の中国の進歩を妨害する努力に耐える「要塞中国」を北京が建設するにあたり、新しい規則や大衆運動が見込まれる。

・北京が米国の最近の敵対的な動きへの反応として安全保障上の規制の強化を経済及び国民に課すならば、これは中国の目覚ましい経済的発展の原動力、起業家精神を窒息させる危険がある。中国はどこにも脅威を見る役人が主導する要塞経済の建設が、毛沢東時代の不足を特徴づけたことを思い出すべきだろう。

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 中国の歴史において、改革開放に路線を変更したときと同じような大きな変化が起きていると判断される。

 習近平は国際環境が中国に多くの脅威をもたらしているとの脅威認識の下、〝要塞中国〟の建設を目指しているとの上記の社説の主張は大体当たっていると思われる。「すべての安全保障化」というのは新しい言い方であるが、富国強兵のうち、富国より強兵に力点を置いた政策展開が今後行われていくと考えられる。対外的には攻撃性を高め、国内的には社会・経済を厳しく規制していくことが確実である。


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