人口減少・地価下落と密接に関わる空き家問題
こうした人口減少と地価下落に苦しむ地域では、住宅需要が低迷しているため、昨今社会問題化している空き家の問題も深刻化しやすい。空き家が問題なのは、それが土地の適切な利用を妨げたり、老朽化して放置された空き家が周囲に悪影響を及ぼしたりするためである。特に、販売中の「売却用」でも入居者募集中の「賃貸用」でも別荘などの「二次利用」でもない「その他」に分類される空き家は、所有者の管理する動機が弱く、問題を引き起こしやすい。
空き家率は18年には日本全体で13.6%に達し、約6240万戸の住宅のうち、約850万戸が空き家となっている。この水準は、全国的に空き家問題が深刻であることを示しているが、地域によってはそれよりもはるかに深刻で、空き家率が20%を超えるところも数多く存在する。
図2は、15~20年の地域の人口変化率と18年の空き家率との関係を表している。この図では横軸に人口変化率を、縦軸に空き家率をとっている。
図2をみると、おおむね人口が減少している地域で空き家率が高くなっていることがわかる。住民が減れば、必要とされる住宅数が減るわけであるから、人口増減と空き家率の高低が対応するのは自然である。
図1および2をみると、近年人口が増えている地域では、昨年から今年にかけて地価が上昇し、そうした地域では空き家率も比較的低くなっている。一方、人口が減っている地域では、全国的な地価上昇にも関わらず地価が低迷し、深刻な空き家問題に直面している。
前者の地域では、まだ土地の利用価値が十分評価されているため、空き家を何とかすればその土地を利用しようという人が見つかる可能性が高く、コロナ禍からの回復基調に加えて再開発などを行うことにより土地の適正利用が期待できる。
一方、後者の地域では、更地にしたとしても、利用する人が見つからない可能性がある。こうした場合、所有者が空き家を取り壊そうとする誘因も低く、空き家問題は一層深刻化してしまう。