2024年4月15日(月)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2023年4月9日

きれいな英語へのネイティブチェック

 2点目は、まず使ってみるということだ。お勧めは「英文の添削推敲」のツールとしてである。今でも多くの日本企業が、英文のビジネス文書の発信において、ネイティブチェックを通さずに送付することがある。それでも意味が通れば良いと思っている企業も多いようだが、明らかに印象は悪化する。

 そこで、ChatGPTを使うことで、正確で感じの良い英文による対外発信を心がければ、生産性も、そしてコミュニケーションの精度や速度も飛躍的に向上するであろう。

 もちろん、ファクトの部分は機密事項だからダミーのデータを入力して後で置き換えるなど、使い方のコツはあるが、とにかくツールとして極めて有力であることは間違いない。留学を検討している学生なども、申込みのレター等を「留学支援エージェント」などに頼むのではなく、ChatGPTを使って自分で行うことで手続きがサクサク進むであろう。

 一番の恩恵があるのは、英語に苦手意識を持っている理系の研究者などだ。現在は、サイエンスの研究者においては、英語の論文執筆や、英語による学会発表というのは、ほぼ必須事項となっている。その論文執筆におけるツールとしてChatGPTは、大きな手助けとなる。

 もちろん、オリジナルなデータや発見など、大切な部分はダミーにしてAIを通す必要があるし、学術誌によってはAI使用のガイドラインを守る必要がある。だが、仮に参照するだけの使い方であっても、読みやすく好感度の高い英文がサクサク書けるようになるわけで、日本人の研究者に取っては大変に心強い味方になるのは間違いない。

 その他、インバウンド需要に期待する飲食店やサービス業などは、これを機会にメニューやホームページを日英バイリンガルにして、英語の部分については、ChatGPTでネイティブチェックをかければ、好感度も業績もアップするに違いない。

 それこそ、地方公共団体や金融機関など、公共サービスを担う団体で、日本語だけでなく英語のホームページやパンフレットを展開する際に、これまではネイティブチェックを通さない「日本風の分かりにくい英語」を表示していた場合があると思われる。こうした団体の場合も、これを機会にChatGPTを通して、綺麗な英語表現にすれば、外国人にとって利便性を高めることができるだろう。

日本語を生かす言語政策を

 3点目は、日本社会としての向き合い方だ。ほぼ実用段階となっている英語と比較すると、時間的には少し先になるかもしれないが、日本語におけるChatGPTなどAIによるデータ蓄積と、対話型のサービスはやがて実用化されるに違いない。そうなれば、日本語による知的活動のかなりの部分が影響を受けることになる。

 だが、ChatGPTを展開するOpen AI社も、そしてこれと提携したり同種のサービスを立ち上げようとしているGAFAMなどの勢力も、現時点では全てが欧米勢である。もしかしたら中国勢もそこへ参入してくるかもしれない。そうなれば、日本社会の活動の多くの部分が外国勢力によってコントロールされることになってしまう。

 慢性的な資金不足に悩む日本経済であるが、こうした問題には歯を食いしばって投資を行い、自国の文明は自国で守るという姿勢を堅持したい。少なくとも、日本語によるAIの高度な実用化には、日本語という言語に相応しいアルゴリズムが必要であり、そのためには日本語という言語を質的、量的に深く解析するプロセスが必要だ。

 これは国策として、しっかり進める必要がある。国の言語政策といえば、流行語に対して「正しい日本語」を対置して、変化を認めたり、変化を批判するといった「のんき」な研究が主となっている。

 だが、もっと本質的な部分、つまり「よりコミュニケーションの効率を上げ、正確性を上げ、人間関係を円滑にする」日本語のあり方ということを、国民的に議論する必要がある。その上で、日本語のあるべき姿、あるいは否定できない現状を踏まえつつ、データを蓄積してAIに作業のサポートをさせる、そうした言語政策が求められる。


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