2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月8日

(kirstypargeter/gettyimages)

 米外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長とチャールズ・カプチャン上級フェローが、米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」のウェブサイトに4月13日付で掲載された論文‘The West Needs a New Strategy in Ukraine’において、ウクライナ戦争について西側は新たな戦略を必要としていることを論じ、今年末にかけて休戦に持ち込むべきことを提唱している。長文であるので、主要点のみをごくかいつまんで紹介すると、次の通り。

 ウクライナを屈服させようとするロシアの努力は失敗したが、この紛争の最もあり得る結末はウクライナの完全な勝利ではなく血生臭い膠着状態である。従って、紛争を外交的に終結させるべしとする要請は強くなっている。

 しかし、双方とも戦うことを誓っており、交渉による解決のための条件は熟していない。ロシアはドンバスの大きな部分を占領するつもりである。ウクライナはドンバスとクリミアの間の陸上回廊を打破し、その全土からロシア軍を排除し領土的一体性を回復する準備をしているようである。

 西側はその原則を犠牲にすることなくこれらの現実を認めるアプローチを必要としている。最善の方策は2本柱の戦略である。まずは、ウクライナの軍事能力を強化し、しかる後、今年末にかけて戦闘の時期が過ぎるに伴い、モスクワとキーウを交渉のテーブルに付かせることである。

 西側はウクライナに対する武器支援を直ちに迅速化し、その量と質を強化し、ウクライナの反転攻勢をできるだけ成功させて、モスクワに外交的解決を考慮するよう仕向けるべきである。反転攻勢が終了するまでには、戦場で最善の努力を尽くした後であり、また、兵員と外国の支援の制約の増大に当面して、キーウも交渉による解決という考えを受け入れることに傾くかも知れない。

 第二の柱は、停戦とこれに続く和平プロセスを今年末に向けて斡旋することである。この外交的な賭けは失敗するかもしれない。双方とも戦い続けることを望むかもしれない。しかし、衝突の再発を防止し、うまく行けば永続的な平和のための舞台をしつらえ得る、永続的な休戦を追及する価値はある。

 キーウに休戦と不確かな外交努力という路線に同調させるのは、モスクワに同調させるのと同様、困難なことである。多くのウクライナ人は、この提案を裏切りと見なし、休戦ラインは新たな事実上の国境になるに過ぎないことを怖れるであろう。ゼレンスキーはその戦争目的を劇的に縮小することが必要になる。


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