クリミアで利用される水のうち、圧倒的に多いのは農業用水であり、家庭用の割合は10%あまりのようである。したがって、北クリミア水路が止まっても、生活用水程度はクリミアの水源で賄うことができ、住民の生活に大きな影響はないようだ。しかし、水路が復活しない限り、農業用水は先細っていき、特に稲作などは絶望的となる。
もしもロシア側がダムを爆破したのだとしたら、こうした犠牲を厭わない、なりふり構わぬ決死の作戦だったことになる。あるいは、プーチン政権にありがちなように、地元行政や農業部門とは何の調整もなく、特定部門の独走のような形で強行されたのだろうか。
ダムの修復には数年かかるとの指摘も
現時点では、ダムがどの程度崩壊しているのかも、確認するすべがない。ただ、部分的修復は不可能であり、新しく建設する必要があるのではないかとの声も一部に出ている。
ウクライナの専門家によれば、ダムおよび水力発電所を新規に建設するとなれば、少なくとも5年間かかり、10億ドル以上の費用を要するということである。しかも、貯水池を再び満杯にするのに、さらに3年かかるという。
そして、言うまでもなく、戦火が止まなければ、ダムの建設工事に着手することもできないはずだ。充分な農業用水が供給されない期間が長期化すれば、豊かな農業地帯だったウクライナ南部が「砂漠化」までは行かなくとも、不毛の大地と化す恐れは決して否定できない。