2024年5月19日(日)

MANGAの道は世界に通ず

2023年8月19日

キャラクターのマルチ展開(IPマルチユース)

 実は筆者は首尾一貫として、このようなキャラクターのマルチ展開(IPマルチユース)を以前より提唱していた。

 傾向として、日本のコンテンツのビジネスモデルは、アーティストと作品が強く結びつきすぎているため、連載が終わったらビジネスとしてもそこで終了となりがちだ。死蔵されている多々の作品(IP)が有効活用されきっていないという状況があるのだ。

 米国であれば、原作コミックを1人の作者のみが描くということはなく、スタジオで組織的に集団で作っている。だからこそ著作権も、個人でなく集団に紐づいており、ビジネスのためのマルチな展開がしやすいのだ。

 この結果として現在の、マーベルコミックスが展開する、アメコミヒーローたちが一同に介するアベンジャーズシリーズ『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』に繋がっているわけだ。

 近年では邦画業界でも、東映の期待を一身に背負った庵野秀明氏が、『シンゴジラ・シンウルトラマン・シンエヴァンゲリオン・シン仮面ライダー』と、マルチバースに繋がるような展開を推し進めている。

 筆者個人としても、日本の主要なマンガ・アニメのヒーローたちが、一同に介しながら映画の世界で戦っていくという「日本版アベンジャーズ」が、ファンとしてぜひ実現されていって欲しいと希求している。

 ゲームの分野であれば古くより、権利関係が整理されているため、「ファミコンジャンプ」などのマルチバース的な作品は定期的にリリースされている。これらをより踏み込み、公式に近い形で、アニメや映画でのマルチバース展開がされていくことを願うばかりだ。

 革新的なチャレンジを続ける漫画家の佐藤秀峰氏は、ヒット作『ブラックジャックによろしく』(講談社)の権利を解放し、二次使用を権利フリーにしたことで、付随して大きな収益を上げられたことを独白している。参考:https://ascii.jp/elem/000/001/436/1436928/

 日本は職人気質な国だからこそ、作品や技術が死蔵してしまい、有効活用されいない現状がある。だからこそ、上記のような例に目を向け、企業に埋蔵されている貴重な特許はないか等、振り返ることが重要だ。

 例えば日本のテレビ番組も、権利関係が複雑のため、海外に販売しようにしても非常に許諾が整いにくい。しかし、『SASUKE』(TBS)の例で見られるように、整理さえされれば海外での広がりや収益もかなりの幅を見込むことができるのだ。

 「ワンコンテンツマルチユース」は拡大するビジネスの鉄則であり、近年の漫画業界から学べることは大きいであろう。

   
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