2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年9月20日

 フィナンシャル・タイムズ紙の8月24日付け社説‘Principles for good industrial policy’が、良い産業政策の原則について、競争や開放された貿易を促すものでなければならない等、いくつかの原則は遵守すべきだと述べている。主要点は次の通り。

(Fahroni/gettyimages)

 米国インフレ抑制法(以下IRA)が成立してから1年後、英国は「先進的な製造産業計画」を策定中だ。それは、電気自動車(EV)から水素製造まで数十億ドル規模の米国のインセンティブ包括予算に続く新たな産業政策の波のひとつである。

 米国では既に新工場が各地に建設されている。しかし、政府介入の規模と国内生産優遇の支援策の長期的な影響についてほとんどどの経済学者が懐疑的である。

 世界中の緑のエネルギー、テクノロジー、およびバッテリー供給チェーンを国内に確立しようとの試みは非常に困難なものだ。生産が最も効率的に行える場所からそれを引き離すことは、無駄でありコストを上げる。また報復を招く可能性もある。

 多くの国が米国のIRAに追随しているが、いくつかの原則は遵守すべきだ。

 第一に、いかなる経済戦略も競争を促進する経済環境を作ることを重視すべきだ。これにより既存の強みが促進される。近代的インフラへの投資、効果的な訓練計画、グローバルな才能獲得のための移民政策が重要だ。その際、ターゲット指向の支援が必要となる場合がある。

 第二に、使用する政策ツールは、対処しようとする課題に適合すべきだ。たとえば、市場価格の保証は、関係企業に確実性を与えるし、官民連携は、プロジェクトのリスクを低減するのに役立つ。税額控除などの金融インセンティブは、リソースを生産性の低い産業から生産性の高い産業へ移行させたい際には重要な役割を果たす。

 第三に、何よりも、産業政策は競争を排除してはならない。グローバリゼーションは、何十年にわたって、それぞれの国の強みによる国際的なサプライチェーンを基礎に生産性成長の推進力になった。しかし、米国のIRAのローカルコンテンツ規則等保護主義的な措置は、国内製造業を甘やかし、「目には目を」の報復的な措置を引き起こすことにより、競争を阻害する。フレンズ・ショアリングや友好国間の自由貿易は、悪意のある国との貿易に代わる選択肢となる。

 気候変動、技術の変化、不安定な地政学に対処するためには、政府からのターゲット指向かつ適切に設計された介入が必要である。しかし、政治指導者が自由市場と開放された貿易を益々無視するようになれば、目的達成は却って困難になるだろう。

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