2024年12月18日(水)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年10月3日

 この漁港整備は20年度に終了することとなっているのだが、それで終わりというわけではない。21年度からは新たに事業費総額26億2000万円の漁港整備事業が開始されている。

 このように、一つの整備計画が終わると、全く同一の漁港で、また新たな漁港整備事業が開始されるということはよくある話である。また、ここでは特定の漁港を取り上げたが、この漁港が特に問題があるから取り上げたわけではない。多額の事業費と比較して、その事業を行うメリットがあるのか疑問の多い漁港整備事業は至る所に転がっている。

漁港版・政官業のトライアングル
「天下り」の構図に?

 こうした漁港予算が通るのは、それを強く推進する勢力が存在するからである。それはすなわち、日本の業界にありがちな、政官業のトライアングルである。

 「政」の部分としては、自民党の「漁港漁場漁村整備促進議員連盟」が挙げられる。業界団体の会報によると自民党の衆参両院議員144人によって構成され、漁港整備に対する応援団となっている。彼らからは、漁港予算の満額確保が毎年のように要請される。

 「官」の部分は、水産庁でこの問題を管掌する「漁港漁場整備部」である。「業」は、「全国漁港漁場協会」「全日本漁港建設協会」などの業界団体をまとめ役とする漁港整備に携わる業界となろう。

 そして、ここにも日本の特定の業界にありがちな、「官」と「業」の密接な結びつきがある。「全国漁港漁場協会」は「漁港協会」として設立された1948年以降、漁港建設協会も同じく1978年の設立以降、その会長は一貫して水産庁漁港部長および漁港漁場整備部長によって占められており、関連団体の「漁港漁場漁村総合研究所」、「水産土木建設技術センター」の歴代トップも、ほぼ水産庁漁港漁場整備部OBが務めている。

 現職の全国漁港漁場協会常勤理事、漁港漁場漁村総合研究所の常務理事、水産土木建設技術センターの専務理事、および漁港漁場新技術研究会会長も、やはり漁港漁場整備部OBである。わかりやすい「天下り」の構図といえるのではないか?ちなみに、公開されている資料によると、全国漁港漁場協会会長の年間役員報酬は1200万円だそうである。

遅々として進んでいない資源管理
今こそ必要な、予算の再配分

 冒頭にも述べたが、水産予算の大幅な増額は、水産改革に対する一種の「見返り」である。残念ながら、資源管理は遅々として進んでいない。資源管理に振り分けられる予算もわずかである。

 こうしているうちにも、漁獲量も漁業者数も、毎年過去最低を記録し続けている。このままでは、漁業者もほとんどおらず係留される船に乏しい漁港だけが残りはしないか。まさに「国破れても漁港あり」である。

 国連持続可能な開発目標(SDGs)では、漁獲を効果的に規制し、乱獲を止め、科学的な管理計画を実施すること、過剰漁獲能力や乱獲につながる漁業補助金を禁止することが謳われている。また、昨年採択された世界貿易機関(WTO)漁業補助金協定では、乱獲された資源に関する漁獲に対する補助金を禁止することが求められている。効果的な資源管理措置を伴わず、漁獲能力のみを拡大させる漁港整備とは趣旨として相いれない。

 資源が右肩下がりに減るなか、われわれに残された時間は、もうあまりないのかも知れない。だからこそ、インフラのみの整備ではなく、資源管理による持続可能な漁業を目指すべく、今まさに大胆な予算のリシャッフルが必要となろう。

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