2024年11月20日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月11日

 ニューヨークタイムズ紙は、同紙コラムニストRoss Douthatによる‘What the Ukraine Aid Debate Is Really About’(ウクライナ支援を巡る議論が真に意味すること)と題する論説を2月21日付けで掲載し、ウクライナ支援支持者の前提は、中国の台湾侵攻が将来の問題だということだが、台湾併合のインパクトはウクライナ敗北よりずっと大きいので、双方に対応する道を選ぶべきだと指摘している。要旨は以下の通り。

(HUNG CHIN LIU/Flory/gettyimages)

 米国のウクライナ支援批判者が言うのは「欠乏状況」ということだ。戦線が伸びウクライナ支援と中東対応、東アジア戦争準備を同時にやるのは無理なので欧州にロシア対処を期待するということだ。これは孤立主義でなくドンバスより台湾を懸念するというアジア第一主義でこれが共和党のウクライナ政策批判の共通項だ。

 なぜこの議論に支援支持者は不満なのか。まず、反対者の真意に疑義があり米国の義務放棄を正当化する言い訳に過ぎず、保守派やトランプが台湾のために戦争する価値はないと決定すれば、正当化の何らかの言い訳を見つけると思われる。

 他の問題もある。明日の中国の潜在的行為に備えるためプーチンの今の侵略対処に全力を出せないということだからだ。筆者(Douthat)も「アジア第一」には同意するが以上の議論には苛立つ。仮に休戦すべき時だとしても支援の急速な削減は間違いだ。

 東アジアを欧州での現実の戦争に優先する背景には2つの前提がある。

 第一に、中国が台湾併合に真剣で急いでいること。中国の敵対行動の目的が遠い先なら、ウクライナと台湾は交換関係には無いが、中国の危険がより緊急で、中国が長期的挑戦を認識し、米国が他の危機にかまけ分断され今後4年間大統領の能力が限られると考えれば、ギャンブルしてくる可能性が高い。直に使い尽くす対戦車・対空ミサイルを製造しアジア同盟国支援の7倍以上の対ウクライナ支援を追加すれば、中国にすぐ仕掛けるよう呼びかけているに等しい。

 第二は、台湾が併合される悪影響はウクライナの敗北に比べ相当大きいということだ。両国が同列なら、ウクライナの現実の危機に全ての手を尽くすべきだが、彼らは同列ではない。

 米国の対台湾コミットメントは70年。ニクソン以降の「曖昧政策」にも拘らず台湾は米国の傘の元にあると見られておりウクライナと真に異なる。


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