この2つの問題点を解決するには、普段から森林・作業現場を巡回し、森林施業(森林の取り扱い)や作業方法、労働安全を指導できる人材、すなわちフォレスターを配置することである。
600億円すべてをこれに注ぎこんでも、全国の市町村数はおよそ1700であるから、1市町村当たり3500万円。これではフォレスターを3人雇用し、活用するのがやっとであるが、せっかくの森林環境税なのだから、この際フォレスター起用に特化するぐらいの決断が必要だ。現場に密着した立場からなら、いくらでも新企画が創造できるはずである。
肝腎なのはフォレスターの適材の発掘であるが、森林経営に熟知し、チェーンソーなどの道具の使用に長けた人材は各地域に必ずいるはずであり、他地域から求めてもよい。即戦力は森林組合や事業体の従業員、伐採から搬出、出荷まで自力で行う自伐林家等に必ずいるはずである。
雇用形態は市町村による直接雇用でも委託でも、市町村の状況に応じて工夫すればよい。複数、できれば世代の違う3人いれば、施業技術や作業技術の伝承にもなる。
採用に当たっては、資格の有無よりも実際の技術・技能、柔軟な発想を重視すべきである。筆者も技術士であるが口先だけで、これはダメ。知識、経験、発想力豊かで、チェーンソーの扱いもプロであることが望ましい。
フォレスターなどの都市部の市町村には必要ないと思われるだろうが、公園や近郊林の樹木は大きくなりすぎて、伐採も容易でないケースが増加している。これは伐採技術の中で最も高度な特殊伐採というものだが、台風や地震など災害時にも役立つこと請け合いである。
被災地での救援、復旧のために全国のフォレスターを糾合して派遣するなど応用性も高い。それと最近は都市部への進出が著しいクマやイノシシ、シカなどの野生鳥獣対策にも、山村と協働して対策に取り組む必要がある。
森林環境譲与税は理想的補助手段
森林環境譲与税は、使用する市町村にポリシーがあるなら、これほど使いやすいものはない。補助金と違ってひも付きでないから、どう使おうが国から文句をつけられることはない。できれば、今ある国庫補助金もすべて譲与税化した方がよい。
国が行う森林・林業政策は全体主義的で、これが過度な人工林化をもたらし、花粉症が激化する一因となった。市町村がそれぞれの地域に応じた政策と森林管理を実現できるようになれば、全国の森林はおのずと多様性の宝庫となるであろう。