EUの中国製EVへの課税策
昨年10月4日、欧州委員会は、中国製EVに関する政府の補助金の調査を開始した。中国政府がEVメーカーと消費者に提供しているさまざまな形の補助が、中国製EVの欧州での販売価格を引き下げている疑いだ。
今年6月12日に欧州委員会は調査結果を発表した。中国製のバッテリー稼働のEV(BEV)は不公正な補助金を得ており、欧州のEV生産者に経済的損失をもたらしているとして、世界貿易機関(WTO)規則違反に匹敵する手法として問題の解決策を中国当局者と議論し、もし7月4日までに合意に達しない場合には、次の暫定税率が調査対象となった3企業に対し導入される。
ジーリー(吉利汽車) 20%
SAIC(上海汽車集団) 38.1%
他の企業については、以下の暫定税率が適用される。
調査に協力しなかった企業 38.1%
既に欧州委員会と中国当局との議論は開始されていると報道されているが、7月4日までに合意に達する可能性は薄いだろう。その場合には、暫定税率の課税開始から4カ月以内、つまり11月4日までに、最終課税率が決定する。
欧州市場で台頭する中国製自動車
米国の中国製EVへの100%課税案(【貧乏人はガソリン車に乗れ】これでは学校にも、職場にも行けない!車社会アメリカの現実と未来、EVはどうなる? Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp))に続き、EUも暫定的とは言え、現在の10%からの増税に踏み切ったのは、中国政府による補助金に加え、欧州市場における中国製EVの好調な売れ行きが警戒されているためだ。
2019年に中国は約25万台のEVを輸出したが、南アジア市場に8割以上が供給されており、バングラデシュが最大の市場だった。欧州市場向けはオランダの6300台が目立つ程度だ。
20年からのコロナ禍による自動車の販売低迷を打開するため、欧州主要国は脱炭素支援もありEV購入に関する大型補助金を導入し、20年からプラグインハイブリッド(PHEV)とBEVの販売台数とシェアは大きく増え始めた(図-1)。
しかし、ドイツでの昨年末でのEV購入補助金の打ち切り、台数増との比較では進まない充電ポイント整備により高価格のEVの販売には欧州では陰りが出てきている。今年第1四半期の販売シェアは、対前年同期比では若干のプラスだが、対前年比ではマイナスだ。
BEVのシェアは、前年の14.6%から12%、PHEVは7.7%から7.4%に落ち込んだ。一方、ハイブリッド(HV)のシェアは25.8%から28.9%に伸びている。
欧州内の中国製EVの販売は減速しているが、昨年までは順調に伸びていた。図-2がEUにおける上位の自動車輸入国の販売台数の推移を示しているが、EVを中心に中国製自動車の輸入台数は大きく伸びた。
2020年に17万台に届かなかった輸入台数は、23年に70万台を超えた。EUにおける輸入国第一位に踊り出ている(図-2)。