日本でも人気が高く、ノルウェーの水産業を成長産業としてけん引しているアトランティックサーモンも完全養殖です。養殖の環境が整えられ、非常にきれいな海と高い技術力で管理して生育されていますが、昨年(23年)のへい死率は16.7%(前年16.1%)と記録的に高かったと報告されています。
ノルウェーの技術と、魚を育てる環境への配慮と規模は、別次元であり現場を訪問すると驚かされます。しかしながら、そのノルウェーでさえ、完全養殖のサーモンが成長過程で死んでしまうことが問題になってきているのです。
わが国が考えねばならないこと
完全養殖は、今後も技術革新が進んでいくことでしょう。その技術には期待したいと思います。
しかしながら、日本そして世界で起きている現実を見ていくと、優先するべき最も重要なことは「資源管理」だということがわかります。
ウナギは今のようになってしまう前に、規制を強化していれば完全養殖しなくても国内のシラスウナギからの養殖で十分でした。しかしながら、獲り過ぎて資源をつぶしてしまえば、その回復にかかる時間と経費は莫大なものになってしまいます。それが今の状態です。
天然ウナギや稚魚が住んだり・隠れたりできる環境を整えること。そしてシラスウナギの漁獲を科学的根拠に基づいて、漁獲を大幅に制限して「我慢」することが非常に重要なのです。
完全養殖によって、近い将来手ごろな価格で再びウナギが食べられるほど現実は甘くないのです。