2025年4月4日(金)

特集:食料危機の正体

2025年2月28日

コメの輸出促進で
食料安全保障に貢献する

 山﨑氏が見据えるのは乾田直播で作ったコメの海外輸出だ。昨年実施した実証実験では、1俵4500円(1キロ・グラム75円)のコストで生産する公算がたった。コモディティーとしての輸出を考えたときにも、十分競争力のある価格だ。また、ジャポニカ米を輸出する発想からの転換も必要だという。

 「輸出相手国が喜ぶコメを作り、輸出量と額を上げていくというのも一つの戦略だ」(山﨑氏)

 同社では昨年からインディカ米を作っており、今年は乾田直播で、リゾットで使われるカルナローリ米などの品種を試験栽培する予定だ。インディカ米の発芽力は優れており、単収は13俵を見込める。1俵4000円台前半での生産も視野に入る。

米カリフォルニアでは複葉飛行機で種もみを播いている。日本のコメは、海外産の低コストなコメと同じ土俵で戦わなければならない(JUSTIN SULLIVAN/GETTYIMAGES)

 農水省は2020年から30年に、92万ヘクタールの農地が耕作されなくなり、農業経営体は半減すると予想している。超低コスト・超効率的な生産技術である乾田直播は日本の農業を救う一つの解になる。山﨑氏は「例えば、中山間地の余った農地で、乾田直播により輸出用のインディカ米を作ることも可能だ。輸出の促進と農地の維持という両面で、日本の食料安全保障に貢献できる」と話す。

 一方で、輸出用米を作る生産者への所得補償も必要だ。

 「主食用米を作るより、価格は圧倒的に安い。買いたたかれれば、安く作れば作るだけ損になり、農家が取り組むインセンティブはなくなる。飼料用米に使っている転作補助金を、輸出用米に振り向ける政策も検討されるべきではないか」(同)

 コメ輸出の拡大は簡単なことではない。しかし、諦めるのはまだ早い。新しい技術と発想で、新時代の輸出戦略を打ち出すことが、日本の食料安全保障につながるはずだ。

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Wedge 2025年3月号より
食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる
食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる

ロシアのウクライナ侵攻により、世界的に「食料危機」が懸念されるようになった。それに呼応するように、日本政府や農林水産省、JA農協などは食料危機をあおり、多くの国民は戸惑っている。確かに、担い手の減少や農産物の価格高騰、肥料・飼料の不足など、日本の農業には課題が山積みだ。しかし、新しい技術や発想で未来を切り拓こうという動きもある。日本の農業を強化し、真の「食料安全保障」を実現する方法を提示する。


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