2025年3月18日(火)

未来を拓く貧困対策

2025年3月17日

大人の自殺者数は減少している

 結論を急ぐ前に、いったん立ち止まって現状をよく確認してみよう。実は、自殺者数の総数は減少傾向にある(図3)。

 最も自殺者数が多かった03(平成15)年と最新の数値を比較すると、自殺者総数は34427人から2万268人に減少している。全体では41.1%減、男性は44.9%減、女性は31.3%減である。コロナ禍ではいったん増加に転じたものの、直近の数値では再び減少している。つまり、大人の自殺者数は減っているのである。

 これは、06(平成18)年に自殺対策基本法が成立し、厚労省自殺対策推進室を中心に自殺対策が進められてきた成果といえる。

 自殺対策基本法が成立する前は、自殺は個人的な問題とされ、社会全体で自殺を防ごうという機運は高いとは言えなかった。人は、なぜ自殺するのか、どうやって自殺へと追い込まれていくのかも、よくわからなかった。もちろん、個別のエピソードとして、あるいは小説やドラマの題材として、「人はなぜ自殺するのか」は扱われてきたが、その実態を統計的に示した資料は存在しなかった。

 その現実に風穴を開けたのが、清水さんを中心メンバーとしてまとめられた「自殺実態白書2008」である。白書では自殺で亡くなった500人超の実態調査を行い、自殺に至るプロセス(自殺の危機経路)を明らかにした(図4)。

出所:NPO法人自殺対策支援センター ライフリンク『自殺実態白書2008』 写真を拡大

 自殺に至る理由はさまざまである。しかし、自殺に追い込まれているプロセスには共通点がある。

 たとえば、事業不振によって負債を背負い、生活苦から家族が不和となり、うつ病を発症する。その結果、絶望して自殺に至る。こうしたプロセスは、理解しやすいだろう。経験則から「何となく、この人は自殺のリスクが高そうだ」という専門職の感覚に頼っていたものが、実態調査によって可視化されたのである。


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