こういった経緯から、拉致被害者家族との面談に、大統領本人が出席することになったのではないかとも考えられる。当初は大統領ではなくルビオ国務長官の出席が予定されていたことを考えると、これは大きな成果と言える。
その後、日米首脳は、大統領のヘリであるマリーンワンに相乗りして横須賀米軍基地へと向かった。トランプは嫌であれば相乗りは拒否するであろうから、これは高市首相の信頼を勝ち取るという努力が実ったことを意味しているだろう。
横須賀では原子力空母ジョージ・ワシントンにそのままヘリで着艦し、艦内で兵士たちを前にトランプは訓示した。そして、その中で首相を呼び寄せ、「勝者」であるなどと褒めちぎった。
首相もこぶしを突き上げ満面の笑みを見せるなどわかりやすい表現で答えた。こうして新首相による日米首脳会談の一日は平穏なうちに終了した。
メインニュースでなかったアメリカメディア
日本のメディアは、その一部始終に注目し、「終始笑顔が」とか「なごやか」という言葉を遣って、この会談を高く評価したところが多かった。
それでは米国メディアはどのように自国の大統領の訪日をみたのだろうか。いずれもこの訪日を扱ったものの、日本のメディアほどには重要性を付与していなかったようである。
テレビの四大ネットワークは、いずれもメインのニュースはジャマイカを中心にカリブ海を襲った最大級のハリケーンを取り上げた。他にもイスラエルが再度ガザを攻撃したというニュースや、トランプが外遊の途上の機内で、大統領三期目を目指すことを否定しなかったものの、誰かの副大統領候補になって、その大統領候補に当選後に辞任してもらって大統領になるという手段は「姑息」だからとらないと述べたことなどが大きく扱われた。訪日については、トランプが日本の首相と会談し、横須賀で米軍に訓示したと報じられた程度であった。
そのような中、トランプ政権をはじめとする共和党に、偏向報道と敵対視され、連邦議会の公聴会で代表が針の筵に座らされた公共放送PBSは、別の角度からトランプの訪日に光を当てた。議会の二大政党の対立によって予算が止まり、それによって低所得者向けの食糧支援である補助的栄養支援プログラム(SNAP)が間もなく滞ることになることに焦点を当てたのである。
これは一定基準を下回る低所得者に食料購入を目的とした補助を行うもので、一般にフードスタンプとして知られている。このプログラムに食費を頼っている低所得者は4200万人以上にのぼり、生き死に関わる問題である。にもかかわらず、議会の対立を調停して解決に奔走すべき大統領が国内に居ないのはひどいとほのめかした。
