2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年11月11日

 一方、日本にとっての利益は、第一に、東アジアの防衛のために日本自身の防衛力を強化できる環境を整えることであり、第二に、日米安全保障条約を米国に順守させることであり、そして第三に、日本国内の防衛装備生産力を高め、それが日本の防衛力と共に技術力や生産力の拡大に繋がるように活用することである。

 さらに言えば、日本の防衛装備を東南アジア・大洋州島嶼諸国と共有し、防衛協力を進め、伝統的友好関係をさらに強化することであろう。日本と米国の利益は完全に重なることはないだろうが、重複部分は小さくない。

高市政権で加速の可能性

 高市早苗首相実現の基礎となった自民と維新の両党合意文書は、公明党の離反後の短時日の間にまとめられたにしては実に秀逸である。安全保障分野だけを見ても、戦略3文書を前倒し改訂し、反撃能力を持つ長射程ミサイルなどの整備、垂直発射ミサイルシステム搭載の長距離・長時間の移動・潜航可能な次世代動力を持つ潜水艦の保有推進、「防衛装備移転三原則の運用指針」の5類型の撤廃、防衛産業にかかる国営工廠の推進などは、これまで公明党の反対で潰されてきた防衛装備分野における長足の進展が期待される。

 なお、統合作戦司令部の一元的指揮統制の強化、自衛隊の「階級」、「服制」および「職種」などの国際標準化も、自衛官の士気を高める上で大いに期待でき、安全保障政策の面から見れば、漸く普通の国への実質的一歩を歩み始めるための環境整備となるであろう。

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