韓国メディアは色めき立った。保守系の東亜日報が「礼を尽くした」と評価すれば、進歩系のハンギョレ新聞も「会談場で相手国の国旗に頭を下げるのは異例のこと」と好意的に報じ、ネット上では「噂と違うようだ」「外交がうまい」という声が飛び交った。
そして、日米首脳会談後、米空母を訪問した際の映像も話題になった。トランプ大統領の横で、高市首相が喜びを隠さず飛び跳ねていたのだ。感情を素直に表現するその姿は、日本人のイメージであるドライ、計算高さとは異なっていた。
どうやら、感情表現を重視する韓国において、高市首相の率直さは強烈な好印象で受け入れられたようだ。「極右」「歴史修正主義者」というレッテルを貼られていた政治家が、人間的魅力で相手国民の心を掴むに至った。
「仲良くせざるを得ない」現実
だが、笑顔と握手の背後には、もっと冷徹な現実がある。この友好ムードは、両首脳の人柄だけで生まれたものではない。米国と中国、ロシア、北朝鮮——日韓を取り巻く国際環境が、両国に協力以外の選択肢を許さなくなってきた。
トランプ政権は日韓連携の強化を一貫して求めている。トランプ大統領は高市首相との会談で日米同盟の強化を確認すると、その足で韓国に向かい李大統領とも会談した。日米韓三国協力の枠組みを重視する姿勢は明確だ。
特に中国とロシアの海洋進出に対抗するためには日米韓の連携が欠かせない。米造船業の復活と海上交通路への覇権には、日韓造船業界を巻き込んだMRO(保守、修理、オーバーホール)体制の構築が焦眉の課題だと指摘されている。
そして北朝鮮。金正恩政権はロシアとの軍事協力を強化し、韓国との「統一放棄」を宣言して完全な敵対関係に入った。ウクライナ戦争への朝鮮人民軍の派遣は、北朝鮮の影響力が北東アジアから世界に拡大したことを意味している。
この状況下で、韓国にとって日本との協力は必須となった。李大統領は国内では尹前政権を批判しているが、外交面では尹氏が構築した日米韓の連携秩序を一歩も外れていない。これは彼の実用外交の表れだ。
それゆえ高市政権発足直後、韓国の動きは素早かった。魏聖洛(ウィ・ソンナク)国家安保室長が電撃的に訪日し、麻生太郎自民党副総裁と会談した。新首相就任時に大統領の側近が訪日するのは異例中の異例。韓国側が、高市政権との関係構築を最優先課題と位置付けていた証拠だ。
もう一つ、見逃せない要素がある。両国民の日常生活に、相手国の文化が深く浸透しているという事実だ。日本では韓国ドラマやK-POPが若年層を席巻し、韓国コスメは女性たちの必需品となった。韓国では日本のアニメやゲーム、ファッションが人気を博し、若者たちは東京を週末旅行先として気軽に訪れる。
