2026年6月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月17日

 これが特に顕著になったのが、イランによるサウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地に対するピンポイント攻撃だ(3月27日)。これにより米側はAWACS、空中給油機、防空レーダーなどに破壊・損傷の被害を受けたのだが、米国の宇宙監視企業のデータなどによれば、ちょうど攻撃の数日前にロシアの偵察衛星が同基地上空を通過し詳細な撮影を行っており、攻撃の翌日には再びロシアの衛星が同基地上空を通過していたことが分かっている。前者は攻撃対象の特定、後者は攻撃成果の確認と考えられ、ロシアによる偵察衛星データの提供が確実と見られた事例だ。

 厳しい経済制裁の下にあるロシアとイランの間で、以上のような装備協力を行うことができるのは、中国への原油密輸による収入と、長い年月の中で形成された制裁回避の技術があるからだ。

 SWIFTが制限されている中でロシアとの決済を可能にする手段の一つは物々交換だ。これには両国がカスピ海で繋がっていることが大きな役割を果たしている。もう一つは、ロシアとイラン二国間における資金移動を容易にする、それぞれに固有の決済システムの統合だ。

 両国は2025年末から26年にかけて、ロシアのMirとイランのShetabそれぞれの決済ネットワークを統合した。これにより両国間ではドルを介さずに装備にかかる支払が可能となっている。ゴールドや暗号資産による決済も可能だ。

ロシア領内の戦略攻撃も選択肢か

 ロシアがイランを支援し、かつ両国とも経済制裁に対する一定の「耐性」が形成されている中で、本件記事は、ウクライナ戦争を終結に導く上での必要条件として、イラン和平に言及しているが、ウクライナ戦争におけるロシアの劣勢は、ロシアによる対イラン支援の余裕をなくし、イランにおける持続性のある停戦の実現を促進することになるだろう。

 その意味で、ウクライナによるロシアの継戦能力の削減に向けたロシア領内の戦略攻撃はウクライナにとって戦況を有利に展開することに役立つのみならず、イランに対する支援の縮小を通じて、イランでの停戦に対しても好ましい影響を与えることになるだろう。

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