経済安全保障をふまえた食糧・鉱物・エネルギー資源確保と関連ビジネスの円滑化に向けた条項をどうEPAに練りこむかも重要な論点になろう。
化石燃料をはじめとする炭化水素資源では、ブラジル、アルゼンチンの存在感が世界で高まっている。ブラジルの原油生産量は26年5月時点で日量約430万バレル、アルゼンチンも日量約90万バレルとなっているものの、日本はほとんどアクセスできていない。炭化水素エネルギーの中東偏重修正のために、この資源のポテンシャルへの関わりを考え直す必要があるだろう。
金属資源では、ブラジルからの鉄鉱石輸入はよく知られているが、近年では、重要鉱物の供給先としての潜在力に注目が集まっている。レアアースについては現時点の生産こそ少ないが、米国地質調査所(USGS)の26年2月のレポートによれば、埋蔵量でブラジルは中国に次いで世界2位となっている。
これまで日本がEPAを結んできた国の中で資源国といえばオーストラリアやインドネシアがある。それら諸国とのEPAにおいては、供給が途絶した場合の協議メカニズムや、資源輸出の禁止・制限措置導入の場合の協議メカニズムの導入が含まれている。これら条項をメルコスールとの交渉で含めることが交渉目標の一つに設定されよう。ちなみに、EUとメルコスールの協定には輸出税・輸出課徴金についても取り扱いがある。
メルコスールの非鉄金属資源については、FTAを結んでいない米国や中国が今後、積極的に進出してくるとみられる。日本としてはEPAを通じて、「資源のサプライチェーンを共に育てる」ことを強く打ち出し、関連企業が現地で円滑に活動できるよう規制や障害を取り除き、現場の日本企業が継続的に課題を提起できる仕組みを作ることが望まれるところだ。
どう交渉を進めるか
こうした交渉を早急かつうまく取りまとめるには、メルコスールに〝うま味〟を提供することだ。メルコスール側における日本との協定メリットは、二つの「ジリツ」にある。
まずは、従来追求し続けてきた自律的でバランスのとれた通商網の構築に役立つということである。そしてもう一つは、技術・産業面での劣位・従属関係を覆し、自立への道を拓き易くなることである。中国や韓国とは裾野産業ベースでの交流があまりみられておらず、中小企業の投資交流増加を通じ、イノベーションをより進めやすくする基盤づくりができる。
こうしたメルコスールにとってのメリットをアピールできれば、日本にとって良い条件を引き出すことができる。それは、日本企業がメルコスールという世界の中核市場の一つでEUなど他地域の企業に対して不利な条件下でビジネスを強いられることを避け、食糧・鉱産資源などの分野で現地企業と協業し新たなビジネス交流の柱を創造することを可能にする。
